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地球温暖化問題をどうとらえるか


国際環境経済研究所理事長


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(「企業会計」2018年3月号から転載)

 温暖化は経済成長と密接に関連したエネルギー問題であり、公害とは異なる。CO2は次の恒等式で表すことができる。

「CO2」=「GDP」×「エネルギー/GDP」×「CO2/エネルギー」

 「GDP」は経済成長、「エネルギー/GDP」は、省エネルギーと経済成長の関係、「CO2/エネルギー」は、CO2排出が少ないエネルギーを選択することであり、原子力、水力、風力、太陽光などの非化石エネルギーはCO2を排出しないが、天然ガス、石油、石炭の化石燃料はCO2排出が避けられない。温暖化対策は、経済成長と比例して増加するCO2をいかに減らすかというエネルギー政策である。
 地球温暖化に対応するため、1997年のCOP3(国連・気候変動枠組条約締約国会議)では、京都議定書で先進国のみに規制をかけた。
 温暖化主要因のCO2大量排出の責任は先進国であり、「これから経済成長する発展途上国は規制すべきでない」という主張を認めたものである。ところが今や、発展途上国代表の中国が世界最大のCO2排出国となり(世界の28%)、京都議定書を脱退した米国が第2位(16%)であるのに対して、京都議定書の削減義務を負ったEUは11%、日本に至っては3.6%を占めるにすぎない(2014年)。
 このため、2015年のCOP21で採択されたパリ協定では、京都議定書の「トップダウン方式」で目標を割り当てるのではなく、各国が自らの経済成長、省エネ推進状況、エネルギー選択を考慮して目標を掲げ、達成状況を検証する「プレッジ・アンド・レビュー」(自主目標方式)を採用したことで、中国を含めた世界各国が参加した(残念ながらトランプ政権はパリ協定から脱退)。
 発展途上国が貧困から脱出するには経済成長が不可欠であり、安いエネルギーへのアクセスが必要だが、各国の状況は異なる。仏国のような原子力大国もあれば、インド、中国は石炭依存度が高い。
 世界の排出量3.6%の日本は何ができるか。わが国は石油ショック以降、省エネルギー技術革新に取り組み、現在でも世界最高水準のエネルギー効率を誇っている(IEA“Energy Efficiency 2017”)。
 鉄鋼業を例にとると、CDQ(コークス乾式消火設備)、TRT(高炉炉頂圧発電)といった先進的な省エネ技術を、中国、韓国、インド等に積極的に移転することで(CO2換算で5,300万トン/年の削減に相当)、世界のCO2削減に貢献できる。
 大気等の環境汚染は国ごとのローカルな対策が必要であるが、地球温暖化は世界のCO2総量330億トン(2014年)をいかに抑制するかというグローバルな課題である。したがって、京都議定書のように国ごとに対策するだけでなく、先進国が国境を越えて発展途上国の省エネ、エネルギー選択に協力することが極めて有効である。