ミャンマーにおける電力分野の現状


日本貿易振興機構 ヤンゴン事務所


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ミャンマーの高い経済成長を維持するためにはインフラ設備の改善が不可欠

 2011年の民政移管後、ミャンマーは7%前後の高い経済成長率を維持し、商業都市であるヤンゴンは高層ビルの建設ラッシュだ。また2015年9月に運用開始したティラワ経済特区(SEZ)への企業進出は順調でゾーンA(404ヘクタール)とよばれる地区はほぼ完売し、現在はゾーンB(101ヘクタール)とよばれる新しい地区の拡張工事が進められている。なお、企業進出は依然として活発でゾーンBへの進出も順調のようだ。一方、2016年10月に施行されたミャンマー投資法によると、ヤンゴンの中心部よりもヤンゴン郊外や地方都市に対して高い税制優遇措置を講ずるなど、同国政府はヤンゴンに集中する投資を地方にも広げようとしている。この結果、少しずつであるが地方都市にも外国企業の進出も始まった。しかしながら、地方都市においては電力や道路、水道といったインフラ設備の改善は遅々として進んでおらず、今後も高い経済成長を維持していくためにはこれらインフラ設備の改善は急務といえる。

2016 年度の設備容量は 5,390 メガワット

 2017年12月に2016年度の同国における電力設備容量と発電量がミャンマー中央統計局から発表された。これによると、同国の電力設備容量は5,390メガワットと見込まれており(図1)、2015年度の5,125メガワットと比較すると5.2%増加した。一方、同国の発電量について、2016年度は178.7億キロワット時と見込まれ、2015年度の160.0億キロワット時と比較すると11.9%増加した(図2)。


図1 ミャンマーにおける電力設備容量の推移
(出所)ミャンマー中央統計局資料に基づき筆者作成


図2 ミャンマーにおける発電量等の推移
(出所)ミャンマー中央統計局およびIMF資料に基づき筆者作成

国民に理解を得ながら電力セクターの改革を進める難しさ

 急激な電力需要の増加を賄うため、前政権は日本から大型石炭火力発電所を導入しようとしていた。しかし、過去に同国へ導入された石炭火力発電所は環境への配慮が十分にされたものではなく、地域住民への健康被害や農作物への収穫に大きな影響を及ぼしたとされている。このため、石炭火力発電所は環境によくないという認識がミャンマー国民全体に根付いており、強い不信感があるのが現状である。2016年からスタートしたアウンサンスーチー政権は前政権の方向性を引き続き踏襲しながらも、石炭火力発電所と比較して国民の理解が得られやすい太陽光発電所や風力発電所といった再生可能エネルギーならびにガス火力発電所の導入で不足する電力の確保を優先的に検討した。しかし検討には時間を要し、対策を講ずることができないまま同国の主要電源である水力発電所からの発電量が減少するとされる乾季を迎え、急遽、トルコから300メガワットの発電船の導入や米国・現地企業連合系企業による300メガワットの発電所の建設を決定したものの、これらは実現することはなかった。2017年4月には、アウンサンスーチ国家最高顧問は国民に対して電力や道路インフラ開発を進めると発言し、2017年6月にはミャンマー投資委員会(MIC)により電力など10分野が優先投資分野に指定された。しかし、2017年4~11月における外国企業からミャンマーへの投資認可件数は163件、投資認可額は44億7,700万ドルであるなか(図3)、電力分野の投資はわずか2件で、投資認可額も1億2,100万ドルと全体の2.7%で小さい。


図3 ミャンマーにおける外国投資認可額の推移
(出所)ミャンマー中央統計局および投資企業管理局(DICA)資料に基づき筆者作成

 この理由として、現政権において明確な電源開発の計画が示されていないことや、2016年に成立したミャンマー投資法において社会的利益に重大な影響を与える可能性のある投資活動に関しては連邦議会に対し承認を得る必要があることとなされ、大型電源開発はこれに該当すると認識されているものの、どのような事案が連邦議会から承認が得られるのかが明らかにされていないということがあげられる。ミャンマーの電力開発において課題はこれだけではない。ユニット単価は35チャット(約0.03ドル)という周辺諸国と比較しても安すぎる電気料金も課題といえる。同国政府は国民負担を抑制するため、電気料金のうち維持管理費や労務費といった費用は国庫から支払われている。近年、同国においてもガス火力発電所が運用開始し、コストが膨れ上がるなかで、2014年度にはついに赤字に転落した。同国政府は、このような状況下で電源開発を進めていくのは困難とし、電気料金の大幅引き上げに向けた議論を開始した。しかし、ミャンマーは高い経済成長を維持しているものの、国民生活は依然として厳しいままで、国民の声を後押しに誕生した現政権としては容易に電気料金を引き上げることができないのが本音であろう。世界銀行は貧困ラインを1人1日あたり1.9ドルと定めている。外国企業が進出し、大きなコンドミニアムやショッピングセンターの建設ラッシュであるヤンゴンであっても、同じ市内のノースオッカラッパやシュエピタ、セイジ―カナウントーといった地域の全住民の43%が0.8~1.6ドルで生活しているのが実態だ。現在、2016年度の同国における電化率は35%となされている。同国政府は2030年に電化率を100%にする目標だ。この目標を実現するためには外国企業からの投資を呼び込む必要がある。現政権は国民の圧倒的支持を集めて誕生したという強みがある。このため、現政権ならば国民に対して丁寧に説明をすれば国民から理解の得られにくい課題についても解決に向けて動き出すことが期待される。ミャンマー政府から一日も早く具体的方針が示されることが待たれる。