COP21-草案はでてきたが、飛び交う牽制球


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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 COP21会合では、12月5日に新たな枠組みの草案が提示された。(http://unfccc.int/files/bodies/awg/application/pdf/draft_paris_agreement_5dec15.pdf)。多くのブランク、選択肢が記載されており、12月7日からの閣僚級会合での交渉の難航も予想されるが、主要な争点に関し牽制球も飛び交っている。

1.
今回の交渉の大きな争点は、1992年の枠組み条約に記載された先進国と途上国は「共通だが差異のある責任を持つ」との文言だ。EUを含め先進国は、「92年とは状況は大きく異なり、最早「途上国」との言葉が相応しくない国もでてきている。一部の「途上国」は資金負担を含めそれなりに責任を分担すべき」との立場だ。

これに対し、BASICの一つである南アフリカ代表は、「枠組み条約の基本的立場は維持されるべき」と「途上国」の立場を主張している。2050年の長期目標も議論されることになるので、長期的な責任の分担を避けるための牽制球だろう。

2.
途上国に対する緩和、適応への資金援助をどの国が、幾ら、どのように負担するかが大きな問題になるが、インドからは牽制球が飛んでいる。
モディ首相が、「経済発展が必要な途上国にエネルギー転換を要請するならば、先進国は資金負担を」と初日の演説で述べたが、COP開会前の11月28日に、インド財務省は「OECDの気候変動に関する資金援助レポートには誇張があり、透明性に欠ける」との報告書を出した。2013年に520億ドル、14年に620億ドルの援助を行ったとするOECDのレポートは正しくないとの主張だ。

これに対し、フランスのファビウス外相は「あと400億ドル積みませば良い」と述べ、「OECDの数字は正しく、400億ドルで資金援助目標の年1000億ドルに達する」と正面から反論していると伝えられている。

3.
188カ国の提出した排出量の目標値は全世界の排出量の98%に達すると言われている。中国と米国を新しいに取り組みに参加させるためには、目標値が法的義務になることはありえないが、5年ごとに目標を見直す制度を義務化することが検討されている。

オバマ大統領は、目標に関する部分的義務化(見直し制度)を米国は受け入れる用意があることを表明したが、上院の環境・公共事業委員会のインホフ委員長(共和党)は、新取り決めの一部でも義務化されるのであれば、議会の承認が必要と既に表明している。合意内容次第では米国内で議論を呼ぶことになる。

4.
草案では、気温上昇を2度目標にするか、1.5度目標にするか併記されているが、ドイツ政府環境省は12月3日に島嶼諸国を中心にした38カ国が希望する1.5度目標を支持する旨表明した。ドイツ政府の目標値の達成が、石炭火力からの二酸化炭素排出により危ぶまれるなかで、さらに自国の目標を厳しくする目標値を支持するのは、なぜだろうか。