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【緊急提言】誤解だらけの気候変動問題

-省エネに対する期待は”適正”か-


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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 今回政府の試算では、年率1.7%の経済成長を前提としている。この成長見通しが高すぎるという指摘はあるだろうが、しかし、国として成長を描くことは当然でもある。経済成長を年率1.7%と置くなら、その前提で最終エネルギー消費や電力需要の伸びを想定するまでだ。政府の想定では、

最終エネルギー消費
2012年:365百万KL(原油換算)→2030年:377百万KL
電力需要
2012年:9,680億kWh→2030年:1兆1440億kWh

となっている。

 しかしこの想定には疑問がある。我が国においては、2000年から2010年の10年間において、経済成長と電力需要の弾性値はほぼ1.0、すなわちGDPが1%上昇すれば電力需要も同じく1%上がってきた。この相関関係を前提とすれば、9,680億kWhが年率1.7%で増加することになるので、2030年の電力需要は1兆3000億kWhを越える。省エネ対策を織り込む前で1兆1440億kWhまでしか電力需要が増えないという想定は、GDP成長率と電力需要の弾性値を、これまでの半分程度しか見込んでおらず、楽観的に過ぎる可能性がある。
 もちろん過去の経験は過去のものに過ぎず、今後の我々の成長の姿を予断するものではない。しかし、過去の経験はそれほど軽視して良いものでもない。我々は2000年代後半以降、原油価格などの高騰に苦しみ相当の省エネモチベーションは持っていたはずであるが、その状況でも成し得なかった省エネ型成長が可能であるかは慎重な議論が必要だ。これが単なる予想なのであれば構わないが、この予想を前提として温暖化の目標を立て、それを世界に公約してしまうことは、日本が約束を破れない特異な国であるからこそ不安を覚える。削減目標算定の前段階として最終エネルギー消費や電力需要の見通しを算定するのであれば、過去のトレンドと大きく乖離するのは適正ではないだろう。

 最終エネルギー消費や電力需要を算出した後に織り込まれる省エネに対しても期待が高い。省エネルギー小委員会の中上座長がその第1回会議で、「いつの時代も最後は全部省エネにツケが回ってくる」注3)と発言されているが、エネルギーの供給サイドが見通せないこの時代においては、省エネにツケを回す、すなわち「省エネに期待して大きな削減目標を掲げよう」、「省エネを頑張れば高い削減目標も達成できるだろう」というマインドがより強くなる。日本の技術力に対する漠然とした信頼感に裏打ちされ、省エネへの期待は高まる一方である。
 しかし、革新的技術の開発には時間が掛かり、その技術が普及するまでにはさらに長い時間を必要とする。我が国は2020年以降の目標年限をまだ決定してはいないが、仮に2030年までの目標だとしても残された時間はあと15年。技術開発と普及の時間軸としては決して十分なものではない。
 省エネに向けて足元でやれることはまだある。特に投資回収年数の長さから省エネ技術に投資することをためらう中小企業に対する支援策の充実や、効率が悪いと言われる日本の建物・家屋の効率改善は急務だ。しかし、省エネはタダではないし、エネルギーの使用は生活の中にあるため、国の施策がなかなか響かない分野でもある。
 省エネへの期待はどの程度が”適正”なのか。世界に向けた公約の前提であるならばあまり過度な期待はしないほうが良い。私は、大きな目標を掲げられないことよりも、言った目標を達成できない方がより「恥ずかしい」と思うからだ。

注3)
省エネルギー小委員会第1回会議(平成25年11月5日)議事録P3
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/pdf/001_gijiroku.pdf

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