地球温暖化の科学をめぐって(1)


国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授

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 7月初め、タイムズのオピニオンページにBBC has lost its balance over climate change という興味深い記事が出た。筆者の マット・リドリーは「ゲノムが語る23の物語」、「やわらかな遺伝子」等の著書を有する英国の著名な科学ジャーナリストである。

http://www.rationaloptimist.com/blog/the-bbc-and-balance.aspx
(注:タイムズの電子記事は有料なので、同文の投稿を掲載した筆者のブログのURLを掲げる)

 この記事が私の目をひいたのは、タイトルのみならず、何度か会ったことのある保守党のナイジェル・ローソン貴族院議員の写真が掲げられていたからだ。

ナイジェル・ローソン貴族院議員

ナイジェル・ローソン貴族院議員

ブライアン・ホスキンス卿

ブライアン・ホスキンス卿

 ローソン議員は、サッチャー政権時代にエネルギー大臣、大蔵大臣を務めた保守党の重鎮であるが、気候変動の世界でも著名である。というよりも環境NGOの間では「悪名」といった方が良いかもしれない。彼が2008年に発表した著書 An Appeal to Reason: A Cool Look at Global Warming は、地球温暖化の科学には多くの不確実性があること、温暖化対策において緩和に比して適応の役割を軽視していること、再生可能エネルギー推進を含む種々の温暖化対策の費用対効果の面で問題があること、欧州における温暖化論議が宗教的色彩を帯びてきており、異なる意見を排除することが問題であること等を論じている(この本については、東大の山口光恒教授のサイトで詳細に紹介されているので参照ありたい)。

 私も山口教授からこの本について教えていただき、読んでみたが、示唆に富む内容だった。2008年といえば、英国を含む欧州全体を温暖化問題が席巻し、それに疑問を差し挟むような言動をとれば、異端者として村八分になり兼ねない状況であった。2007年12月にCOP13でバリに出張した時を思い出す。会場内には夥しい数の環境NGO、研究機関がスタンドを設け、パンフレットや報告書の類を展示・配布していたが、会議場の外、炎天下でビラを配っている人々がいる。見ると地球温暖化CO2原因説に懐疑的な米国の科学者グループであった。彼らも会議場内でのスタンド設置を申し込んだが、UNFCCC事務局から断られたのだという。彼らはいみじくも「温暖化問題は科学ではなく宗教になっている」と言っていた。そんな状況であるから、ローソン議員が英国で行った問題提起は勇気がいることだったに違いない。英国に赴任してから、二度ばかりローソン議員と話をする機会を持ち、温暖化問題について議論もした。

 そのような事情もあり、上記の記事に目を留めたのだ。事の発端は本年2月にBBCラジオが「最近の異常気象は人間起源の気候変動が原因か」というテーマで行った対談である。この対談はローソン議員と英国気候変動委員会メンバーであり、インペリアル・カレッジ・グランサム気候変動研究所長でもあるブライアン・ホスキンス卿との間で行われた。対談の全文は以下のサイトで見られる。

http://www.thegwpf.org/bbc-radio-4-lawson-hoskins-flooding-climate-change/

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