核のゴミ処理の可能性(その2)

-早期開始と着実な実施-


エネルギーシンクタンク株式会社 代表


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4.わが国の進むべき道は?(図-2参照)

 ゴミ処理に「混ざったまではゴミである。分別すれば資源になる」と言う言葉がある。
 核のゴミも分別程度により処理方式には3つの方法が考えられる。

A.
フィンランドが選択した使用済み燃料(Spent Fuel 以下SFと略す)を分別せず地中に埋設する「直接処分方式
B.
フランス、日本が選択しているSF中の有用物質であるウランとプルトニウム(Pu)を取り出し(分別)、残りをゴミとして高レベル廃棄物とし埋設する「再処理方式
C.
SF中のU、Puに加えて更に分別処理を進め有用物質であるマイナーアクチナイド(MA)とゴミのLLFPを取り出し、残りを高レベル廃棄物とし埋設する「分別処理方式

 気の遠くなる長い時間掛かるのは極めて限定的な物(核種)であり、多くの放射能を出す核分裂生成物(FP)の90%注1)以上は1000年程度で十分減衰する(図-2参照)。従って技術的には減衰に長期間かかる核種を上手く分別し処置すれば1000年程度に短縮することは可能である。1000年程度であれば、ローマの水道遺跡はもとより東大寺など木造建築でも十分持つ実績があり国民も理解可能な時間感覚である。更に従来の地下300m以下に埋設するという地層処分と言う方式以外に、監視も補修も出来る隔離方式の可能性も出てくる。

長期間になる原因は寿命(放射能半減期)の長い核種であり、

マイナーアクチナイド(MA)はウラン燃料の利用に付随しPuが中性子を得て生成される物質で、約2.5%注1)程度である。このMAは燃料としてPuと同様に高速炉で燃やし通常の短寿命の物質(核分裂生成物:FP)にすることが可能である。
ウラン燃料の核分裂により放射能半減期の極めて長い(半減期10万年以上)の物は長寿命核分裂生成物(Long Life Fission Product 以下LLFPと略す)と呼ばれ7核種があり、量的には7.5%注1)が生成される。これを中性子により異なる短寿命なもの(核種)に変える(変換)ことは科学的に可能で、30万年を1000年で人に影響を与えない程度の放射能レベルまで下がる。なお1000年後の放射能は直接埋設処分(フィンランド方式)に比較し大凡250分の一である。

 即ちAの「直接処分方式」は後世に大量の放射能を言う負の遺産を残す。
 逆にいえばCの「分別処理方式」は負債(負の遺産)の早期返済システムと言える。

 課題はいかに効率よく工学的に実施するかである。幸いにわが国は30年前から研究を進めてきた。この間わが国だけでなくフランス、米国等の研究と試験の継続により試験データもかなり整ってきた。現時点で技術的には30年程度で実用化の目途は立つと考えられる。

 この『分別処理方式』は、即脱原発と言う「縮」の思考ではなく、わが国のエネルギー安全保障に役立ち、温暖化対策で今後エネルギー利用の拡大が見込まれるアジア地域のみでなく世界的貢献が出来る。この点からもわが国の成長戦略の第3の矢の有力な一つではないだろうか。

図-2 ゴミ処理方式別放射能量

5.技術的可能性と社会

 核のゴミ処理の解決には技術的には4つの段階があり各段階での専門性が高く且つ重要で、従来個々の段階のみに注力し全体を俯瞰して考えていなかった。特に地元、国民に対して個々の分野の一方的説明はしても全体の技術的背景の説明と社会との会話をしてこなかった。今後技術的全貌を把握するとともに、技術と社会の関係を把握し俯瞰することが最も重要である。
以下に主として技術的展望を記す(図-3参照)。

(A) 炉心・原子力プラント
・中性子経済と高速炉(Flexible Fast Reactor 柔軟な高速炉)
現在多く用いられている軽水炉(LWR)は連鎖反応維持に必要な中性子しかない。高速炉は中性子速度が早いため核反応によりLWRより20%の中性子が多く生成され、連鎖反応維持に必要な中性子以上の中性子が出来る。余った中性子の使い方に2種類の方法がある。一つは中性子を使用した以上の新しい燃料であるPuを作る従来の増殖炉方式である。もう一つは中性子を核のゴミを処分するため用いるゴミ処理炉方式(FFR)である。
高速中性子は多くの中性子を作るために、冷却材には液体金属を用いる。FFRの基本概念は混合酸化物燃料(MOX)・Na冷却炉で規模としてはゴミ処理炉(発電もする)の原型炉的意味をもち電気出力は40~60万KW程度が先ずは考えられる。
なおMOX燃料・Na冷却炉はわが国では常陽・もんじゅがあり、我国以外でもフランスは120万KWのスーパーフェニックス(経済的理由から停止、廃炉準備中)、ロシアは60万KWのBN-600(現在稼働中)などはほぼ商用化段階に近い。
またインドは50万KWの発電所を2015年頃運転開始予定である。
・LLFPの短寿命核種への核変換方法の研究
ウラン燃料の核分裂により発熱と共にFPが生成される。放射能を出す物質中、放射能半減期の極めて長いLLFPと呼ばれ7核種がある。LLFPは中性子を吸収し他の安定核種または短寿命の核種に変わる。この核変換効率を良くする方法(LWRタイプか高速炉タイプか)を検討する必要がある。
(B) 再処理・燃料製造の高度化
・六ヶ所再処理工場のHLWシステムの改造を基本
六ヶ所再処理工場(JNFL注2):日本原子燃料株式会社が所有)はフランスから基本設計を導入したLWR用燃料再処理施設で、商用運転を準備中。フランス、英国で商用的実績は十分ありわが国のLWR用燃料の一部は既に再処理を実施している。なお再処理工場は基本的に化学工場で運転経験が重要な要素である。
六ヶ所再処理工場でのプロセスは、受け入れ・貯蔵-切断・溶解-分離-精製-脱硝-製品貯蔵の6段階から構成され、段階ごとに分かれている。提案の『分別処理方式』は六ヶ所工場の主工程は従来通り用い、分離プロセスで出る高レベル廃液にMA/LLFP分離工程を追加する。
JAEA注3)は過去15年MA/LLFP分離に関して基礎研究と実用化研究を着実に進めてきた。残る課題は実績を重ね性能の向上と運転保守など実践的な技術の確立である。
改造工事前に次に記すRETF(試験施設)で事前検証は可能である。
今後実用化に向け工学試験が必要であるが、既に建設途中の再処理機器試験施設(RETF:Reprocessing Equipment Test Facility)がある。使用済み燃料で年間5~50トン程度の処理能力が想定されている。この施設で新しいMA/LLFP分離の装置及びシステムなどの実証試験には活用可能である。
分別処理で性能向上をするにはFP中の同位体分離が好ましい。LLFP7核種中で短寿命物質への核変換効率をよくするために同位体分離を必要とするのは3核種Zr-96,Sn-126,Cs-135である。この同位体分離は『分別処理方式』中唯一の最先端研究分野である。現時点で1~2 有力候補はあるが、今後さらにレーザー・ナノ技術・磁気など非原子力分野など含めて有望候補を探す。世界的にも核のゴミの寿命短縮化目的でLLFP同位体分離を本格的に取り組んだプロジェクト例はなく世界に先駆ける先端研究である。
燃料製造はPu+MA系の研究・実用化開発強化
燃料の安全性確認には原子炉での照射試験が必要で、わが国以外ロシア、インドでも可能である。MAは放射能が高く遮蔽をした中で遠隔操作により製造・検査をする必要があるが、先の再処理施設での遠隔操作技術の応用範囲と思われる。
(C) 高レベル廃棄物体(HLW:ガラス固化体)
30万年間封じ込める目的のため放射線源のMA/FPをガラス体に分子レベルで封じ込めている方式であり、既にフランス、英国などで技術的実績を積んでいる。この方式では一度埋設した放射線の減衰に任せ後は何もしない方式である。『分別処理方式』では30万年が1000年程度に短縮可能であり、この程度の期間であれば人が監視(モニター)をし、また場合に依っては取り出し更に将来の高度化された技術を適用できる可能性もありガラス以外の適切な詰め物を探すことも望まれる。なお低レベル廃棄物(LLW)はコンクリートである。
(D) 埋設地・立地関係・社会(PAからPCへ)
フィンランドは国自体が安定した岩盤が多くあり、地元の人々との長い話し合いにより信頼感が醸成され既に埋設施設の建設段階にある。
安定地盤の乏しいわが国にも無いわけではなく候補地を専門家が複数個所選定し、地域との信頼感醸成を第一義に話し合いを国主導で進める。従来の原子力はPA(Public Acceptance)の概念で人々に受け入れられることを目的に一方的な説明をしてきた。地元の方々が、国民が理解できるか、素朴な質問にどのような説明が適切かをあまり考慮せず押し付け気味な説明であった。今後、環境問題、エネルギー需給など幅広視点からの会話による相互理解と意思疎通を図る。即ちPAからPC (Public Communication)に変え先ず対話から始める必要がある。また地元との信頼関係にはフランスの情報公開法および法的位置づけを明確にした地方情報委員会(CLI)は大いに参考となる。
放射線の健康に与える影響は東電福島事故で現在も多くの人々が不安を拭えない。
同様に高レベル廃棄物問題で健康に与える影響を判り易く説明することは肝要である。

図-3 HLWゴミ処理に関係する分野

6. 纏め

高レベル廃棄物(HLW)の処分場がないことを理由に「即脱原発」は、高レベル廃棄物は無くならない以上、暴論である。「問題の本質はHLWをどうするのか」にある。
高レベル廃棄物の放射能の減衰期間を『30万年』から『1000年』程度に短縮する技術はある。工学的検討・試験を国が主導し精力的に進めることにより30年後の実用化は可能と考える。この間、新規使用済み燃料(SF)は中間貯蔵(乾式貯蔵など)で補う。
高レベル廃棄物処分の埋設地の選択には国主導で進めることは当然として、高レベル廃棄物の処分に伴うリスクに関し、単なる情報公開だけはなく、国民、立地候補地の人々が理解可能な判り易い説明と話し合いが不可欠である。
併せて放射能の人体に与える影響を明確に説明できるよう早期の関係者の努力が望まれる。
注1)
%は核分裂するウラン量(100万KW年間で約1トン)に対する割合
注2)
関連組織
JNFL:日本原子燃料株式会社(電気事業者9社が主として出資した再処理・LWR用MOX燃料製造会社・資本金4000億円)
注3)
関連組織
JAEA:日本原子力研究開発機構(基本的に文部科学省、一部経済産業省と共管)

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