電力市場が電力不足を招く、missing money問題(固定費回収不足問題)にどう取り組むか


国際環境経済研究所所長、常葉大学経営学部教授


 自由化された電力システムにおいては、電源の確保は、総括原価主義のような規制ではなく、市場における競争を通じて行われることが基本である。他方、日本に先んじて小売り全面自由化、発送電分離等の改革を進めてきた欧州諸国においては、昨今「単に市場に委ねるだけでは、適切な電源投資が促されない」つまり「電力市場が電力不足を招く」問題(missing money問題)が顕在化してきている。電源の建設は大規模投資であり、規制による投資回収の担保がなくなれば、従来よりも投資のリスクが高まるため、事業者が投資に慎重になる側面はある。ただ、これだけであれば、電気事業以外の設備産業にも当てはまる。電気事業の場合、電気の財の特質に起因して、市場に委ねるだけでは、電源の固定費が十分に回収出来ないという根源的な問題が存在する。これは、経済学の教科書が教える効率的な市場、つまり短期限界費用により価格が形成される市場を追求することにより顕在化する。

 この問題は米国の経済学者の間では早くから共有され、この問題への処方箋とされる「容量メカニズム」が、米国東海岸の複数の市場で取り入れられている。あるべき容量メカニズム論と言った分野に取り組んでいる経済学者もいる。MITのPaul Joskow、メリーランド大のPeter Cramton、かつて米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)等で活躍し、電力市場を体系的に説明した書の草分けといわれるPower System Economics(Wiley/IEEE, 2002)の著者、Steven Stoft等である。

 本論では、米国の経済学者によるこれまでの研究成果を参考に、missing money問題について、簡単なモデル計算を行いつつ、発生のメカニズムとその対策のあり方について考察した。その結果;

電力市場(kWhの市場)は、電気の財としての特性ゆえにmissing money 問題が発生すること;

missing money 問題を解消するには、kWを維持していることに対して対価(容量ペイメント)が支払われる仕組み、つまり容量メカニズムの導入が有力な方策であること;

一定程度のプライススパイクを前提とすることで、kWhの市場の中でmissing money 問題を解消することも考えられるが、様々な条件をクリアする必要があり、現実的とは言い難いこと;

また、条件を仮にクリアしたとしても、結果的に容量メカニズムを導入したことと大差ない結果になってしまうので、missing money 問題の解消のためには、まず容量メカニズムを検討することが適当であること;

を明らかにした。

詳細は、ディスカションペーパー(PDF:東京電力株式会社 技術部 戸田氏との共著)をご覧ください。なお、エクセルファイルはディスカションペーパーに出てくる表のバックデータです。

ディスカションペーパー全文(PDF)

表のバックデータ(EXCEL)


ページトップへ