日本の停電時間が短いのはなぜか
電力改革研究会
Policy study group for electric power industry reform
日本の停電時間が短いのはなぜか
日本の電力品質の高さを示す指標としては、「需要家1軒あたりの年間停電時間」がよく使われ、欧米諸国と比べても格段に少ない水準にある(図1)。
その理由の第1は、送配電ネットワークの運転自動化が進んでいることだ。配電自動化システムの例を説明する。現状日本では、1つの配電線は図2のように途中に自動開閉器(幹線用)を挿入して6区間程度に分割できるようになっており、さらに自動開閉器(連系用)を介して他の配電線とも連系することが可能(常時はOFF)となっている。例えば、図2の区間③で設備が故障し、異常電流が流れると、配電用遮断器が動作して全区間への送電が一旦停止する。配電自動化システムの導入前は、ここから、健全区間①②への送電までは自動的に行われるが(専門的にはこれを「時限式事故捜査方式」という)、その後の復旧作業は、作業員が現地へ出向する必要があった。つまり、開閉器(連系用)のBとCを現地で操作して残された健全区間④⑤⑥への送電を行った後、事故点の探査・復旧を行っていた。これが配電自動化システム導入後は、BとCの操作も遠隔で自動的に行われるようになり、健全区間の早期の復旧が可能となると共に、事故点の探査・復旧に迅速に着手できるようになった。この結果、短時間に送電される軒数は2.5倍となり、一軒あたりの停電時間は10分の1となるなど、事故復旧時間が大幅に短縮された。
海外では、区間数が都市部でも3~4区間、農村部では2~3区間と少ないこと、配電自動化システムの普及率が低いことなど、日本とは大きく違っている。実際、欧米ではスマートグリッドに取り組む狙いの一つが配電自動化システムの普及拡大である。
第2の理由は、設備の保守や修繕が適切に行われていること。日本では機器故障が発生した場合は、メーカーとも協力して事故原因を追及し、同型設備の予防保全に役立てているが、海外ではこれが行われていないケースも多い。また樹木接触による事故防止のための樹木伐採なども、日本では当然のこととして行われているが、海外で発生した停電事故の報告書を読むと、必ずしもそうでもないようだ。
第3の理由は、事故復旧の訓練や台風襲来時の復旧体制整備が適切に行われていること。電力会社では常日頃より、訓練を欠かさず、台風襲来時には事務所に復旧要員が待機するなど、事故の発生は避けられないとしても、早期に復旧できるよう、あらゆる備えをしているのである。