小型原子炉が広げる地域改造の可能性ー沖縄に原子力発電所ができたら?


経済記者/情報サイト「withENERGY」(ウィズエナジー)を運営

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(写真)宮古島池間大橋付近の海
(沖縄のフリー写真素材サイト「ばんない堂」https://098free.com/photos/11521/より)

原子力でエネルギー供給が変わるか

「ゲームチェンジ」という言葉がある。ビジネスなどで既存のやり方を大きく覆して状況を根本に変えてしまう技術や人をいう。原子力を使ったゲームチェンジがエネルギーの分野で起きるかもしれない。

小型原子炉(SMR)やマイクロ炉(MMR)という次世代革新炉の研究が進んで商業化が始まり、ロシアでは既に導入され、米国や中国では建設が始まっている。原子炉はこれまで発電能力の大きさを追求してきた。一転して革新炉は安全性を高めながら、小型化と安さの長所を強調している。これまで原子力発電は発電量が大きいために、離島などの電力需要が小さい地域では不向きだとされてきた。そうした状況が変わり、地域づくりに活かせる可能性がある

沖縄で原子力発電を行ったらどうなるか。電力関係者、エネルギー研究者の作る「SEJ・日本のエネルギーを考える会」で、「沖縄地域における小型モジュール炉およびマイクロ炉導入に関する可能性の検討」(2026年6月14日)が取り上げられた。原子力研究者の植田脩三氏が執筆した。沖縄に役立つという興味深い結果になった。

沖縄で原子力活用、電力料金は大幅に低下

小型原子炉(SMR)は発電能力30万kW(キロワット)前後、マイクロ炉(MMR)は数万kWクラスの炉をいう。試算では、沖縄本島(人口約129万人)に同30万kWのSMR、宮古島(5.5万人)と石垣島(約5万人)にそれぞれ2万kWのMMRを設置し、今の再エネの量をそのままにして、沖縄の電力最需要期の夏で、適切に供給できるかなどの分析をした。

想定した原子力発電設備であればこれら3つの島では太陽光、風力をカットすることなく、またコストの高い火力発電の使用をかなり抑える形で効率的な発電ができるとの試算が得られた。それによって運転費用(ランニングコスト)が安くなる。

電力供給では需要・供給の規模が大きければ価格は下がる。離島はそれが限定されるために発電コストが高くなる傾向にある。沖縄の島々もそうだ。沖縄本島ではLNGや石炭火力発電を行っているが、離島の発電設備の主体は重油を燃料とする内燃機関だ。その単価は40〜60円kW/h(キロワットアワー)と、大型設備の2倍以上となっていると推定される。

SMRについては国際機関などの試算では上記リポート執筆当時、発電コストは10~20円/kWh、初期投資単価は、45~90万円/kWとされている。米国のアイダホ国立研究所の試算によれば、マイクロ炉による原子力発電の場合は建設費を考慮に入れても1kWh当たり21円となる。MMR設備建設費用は1kW当たり110万円という試算もある。原子力を使えば、沖縄の電力価格は半額になるかもしれない。

エネルギーサービスの情報サイトの新電力ネットの試算によると、沖縄での電力料金はモデル料金で平均的な使用量だと、月額あたりで一人暮らし(210kWh/30A相当)約7716円、二人暮らし(360kWh/40A相当)約1万2300円〜1万3000円前後、三人暮らし以上(400kWh〜/ 50A相当)約1万4000円以上になる。原子力発電の導入によって、電力料金が半減したら、沖縄の経済刺激効果は大変大きくなるだろう。

脱炭素、経済の変化が促進

沖縄は観光業が中心で、経済の稼げる力が多様でなく、その脆弱さが指摘される。沖縄は製造業が少ない。高コスト化もあり日本の産業空洞化は深刻だ。安い電力は製造業を誘致する、重要な要因になるかもしれない。

沖縄県の電力供給での再エネ比率は10〜15%(日本全体では20%前後)にとどまり、脱炭素化が遅れている。原子力発電は再エネと対立するものではない。原子力をベース電源として入れ、例えばテラパワーが米国で建設中の供給量を容易に変えられる設備を導入すれば、火力発電設備を使わなくても変動量を吸収可能になり両者が活用できる。それで再エネの発電量は増やせる。再エネ、原子力が合わされば、脱炭素電源による発電を増やし、地球環境の改善にも貢献する。

沖縄で原子力発電所を運営するなら、その担い手は地域の最大電力会社である沖縄電力になるだろう。同社関係者によると、正式には何も決まっていないが、原子力発電の情報収集は進めているという。

分権的な電力供給システムの可能性

原子炉は近年、設備が大型化、複雑化した。そのために建設のコストが上昇している。例えば、フィンランドのオルキルオト原子力発電所3号機の例がある。これは出力約170万キロワット(kW)と巨大化した。2005年着工、完成予定が2009年だったのに21年まで完成が遅れて、事業者に最終引き渡しになったのは2025年だった。遅れの理由は、巨大化によって精緻な安全対策が必要になって設計変更が繰り返され、加えて2011年の東京電力の福島原子力事故を系にした安全対策の強化が必要になったためだ。当初の建設予定費用は30億ユーロだったが、最終的に110億ユーロ(現在価格2兆400億円)まで膨らんでしまった。負担をした建設会社のアレバは経営危機に陥り、別会社に再編されてしまった。

むろん、工期の遅れ、工費の増大の基本的な原因としては、チェルノブイリ事故以降,欧州において長期間原子力発電設備の新設が中断し、技術の継承が途絶えたことも指摘されている。

原子力発電所の建設に数兆円規模の負担がかかるならば、どんな企業でも建設費用の捻出は厳しくなる。しかし、こうした革新炉は小型化、低価格化、シンプルな構造という真逆の特色を打ち出している。離島や送配電網の整備されていない地域、また巨大原発を作れる財力のない国で、注目を集めることになるだろう。

電力は中央集権的な供給体制が作られてきた。こうした小型原子炉の登場によって、それが分散型に変化する可能性もある。地域に最適なエネルギー供給体制づくりに役立ち、それは経済の姿も変える可能性がある。

どこかで建設による状況の突破口を

もちろん理屈と現実は違う。原子力発電は政治的な争いに巻き込まれやすい。政治的に意見のまとまりづらい状況にある沖縄で導入するのは難しいだろう。

ただし日本は原子力産業を抱える数少ない国であるのに、革新炉の開発が遅れている。政府は7月に「日本成長戦略」をきめ、原子力の革新炉の建設、投資を目標に掲げた。しかし、まだ具体的に動く企業はない。革新炉は米国、カナダ、中国、ロシアが先行して建設中だ。残念な状況にある。

建設においては沖縄を突破口にしてもらいたいが、その他の地域でも、革新炉の日本での建設の可能性を関係者は探ってほしい。革新炉が沖縄で評価されそうな建設コストの安さ、安全性というメリットは、他地域でも当然当てはまる。ゲームチェンジが一つの技術で、起きるかもしれない。私もその動きを応援していきたい。