第14回 日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術専門家交流会


The Japan Iron and Steel Federation

印刷用ページ

1.背景

 日本鉄鋼連盟では、「エコソリューション」活動として、鉄鋼業の成長が見込まれる国や地域に対し、優れた省エネ技術の移転や政策提言等の実施を通じ、地球規模での省エネに貢献している。
 前述の取り組みの一環として、中国鋼鉄工業協会(CISA)とともに2005年に「日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術専門家交流会」を立ち上げ、両国の専門家が環境保全・省エネルギーに関する技術を中心に交流をこれまで計13回に渡って実施し、中国鉄鋼業における環境保全・省エネルギー対策の実施やレベル向上に多大な成果を挙げている。


表 日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術専門家交流会開催実績

2.第14回日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術専門家交流会の開催

 粗鋼生産量が世界一多い中国との交流を通じ、地球温暖化・カーボンニュートラル対策の一層の促進を図るべく、2024年1月23日~25日にかけて、CISAとの共催で「第14回日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術専門家交流会」を日本で開催した。本交流会は、過去数年間にわたり新型コロナウイルス感染症(コロナ)の影響を受け、オンライン開催が続いていたが、今回約4年ぶりに対面開催での実施となった。


主要参加者集合写真(1月24日(水):本会議)


見学会集合写真(左:1月23日(火) 右:1月25日(木))

【両国代表者の発言抜粋】

〇 日本

  • 交流会の名称にもあるように「省エネ」、「環境保全先進技術」についての交流を行ってきたが、足元、カーボンニュートラルの実現に向けた大きなうねりが日中の鉄鋼業を取り巻いており、本交流会においてもそれらの動きを踏まえた交流を行うことに大きな意義がある。
  • 近年は、世界的に問題となっている気候変動や地球温暖化が議論の中心になっており、LCAやEPD等、様々な議題を取り上げ、今回はCBAMやグリーンスチールなど政策的な問題も取り上げられた。
  • 今回の交流会では情報共有だけでなく、日中双方からの活発な議論も行われた。交流会で得られた知見が今後の日中のカーボンニュートラル、脱炭素に向けた活動に寄与できれば幸い。

〇 中国

  • 中国と日本は、いずれも高炉一貫製鉄が中心で、鉄鉱石を輸入に頼り、多くの鉄鋼製品を作っており、どちらも高いコスト競争力と性能を持っているため、脱炭素に向けた目標や課題が一致していて、協力できる余地が大きい。
  • 水素の安定供給やグリーンスチール推進等、日中の抱える課題は非常に似通っており、今後、日中間でより深い議論が必要である。本交流会で日本が講演したGI基金やトランジションファイナンスの発表は中国側にとっては示唆に富んだ話であった。今後も、交流会を継続して、GX化を進めていきたい。
  • 本日の重要な成果として、CBAMへの対応、EPDプラットフォーム、マスバランスグリーンスチール、低炭素鋼に関する基準作りについて日中が協力可能であると相互認識が得られたことは意義がある。

 上記の発言にある通り、これまではBAT(Best available technology:利用可能な最良の技術)に該当する環境保全・省エネ技術に関する交流がメインであったが、足元の世界的潮流を踏まえ、革新的技術開発やCBAM、グリーンスチール等、カーボンニュートラルに関連するテーマに焦点が当たったことは、本交流会テーマの大きな変遷と言える。

 当連盟は、日中の相互利益に則りつつ、時代に即した交流を継続していくことで、引き続き地球規模でのカーボンニュートラル実現に向けた各種取り組みや省エネ・環境対策ならびに鉄鋼業の持続的発展に寄与していく。