EUにおける化学物質規制の動向

-環境委員会環境リスク対策部会

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(「週刊 経団連タイムス」より転載:2023年6月22日 No.3595)

 経団連は5月30日、環境委員会環境リスク対策部会(中島一宗部会長)をオンラインで開催した。経済産業省製造産業局素材産業課の濱坂隆企画官から、欧州連合(EU)において検討が進む有機フッ素化合物(PFAS、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)の規制案について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

PFASとは

 PFASは、約1万種の有機フッ素化合物の総称である。耐熱性や化学的安定性、耐薬品性をはじめとして、他の物質にないさまざまな性質を有することから、リチウムイオン電池、半導体製造や自動車部品、各種機械器具、医療等、幅広い用途に使用されている。

EUにおけるPFAS規制の検討状況

 PFASには「残留性が高く蓄積する」という性質があり、人の健康・環境に対して危険性があることから、現在、EUにおいて、PFAS全般を対象とする規制案の検討が進められている。2023年3月から9月まで、パブリックコメントの募集が行われており、規制の採択は25年ごろと想定されている。

 規制案では、一定以上の濃度のPFASを含有する混合物・成型品について、EU域内での製造、上市、使用を全面的に禁止するとしている。現在、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)においては、PFASのうち、有害性が指摘されているパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)を規制の対象としている。同条約に基づき日本においても製造・輸入が原則禁止となっている。今回のEUにおける規制案は、同条約に定める規制の範囲を大幅に超えて、広範に対象を拡大するものである。

 猶予期間として、代替物質が開発段階にある場合や代替物質が十分に入手できない場合は5年、代替物質がいまだ特定されていない場合には12年が認められる。しかし、対象物質は極めて限定された案となっている。半導体製造関連の物質は猶予期間の対象となるか検討中であり、リチウムイオン電池用材料や空調の冷媒など、猶予期間の対象と確認できない物質もある。極めて厳しい規制案といえる。

日本政府・企業としての対応

 現在の案のとおり規制が実施されれば、サプライチェーン、産業界や日常生活に与える影響は甚大である。気候変動対策といった政策目的の達成にも支障が生じかねない。

 EUによる規制の立案過程では、規制当局が規制の必要性を立証するのではなく、パブリックコメントへの回答を通じ、規制案が適当でない旨の立証が求められる。回答がなければ、規制案を認めることになる。自社・業界に関連する物質について、除外や猶予期間の対象化等の措置が講じられるためには、具体的な根拠を提示しつつ、パブリックコメントへの回答を含めて、EUに働きかけることが重要である。日本政府としても、EUに対して産業界の懸念を伝えていく。 


 意見交換では、日本政府に対しEU当局との積極的な対話を求める意見や、国際条約の規制対象拡大の可能性と日本への影響を懸念する意見が出された。

 意見交換終了後、規制案に対する経団連としてのパブリックコメントの回答案を審議した。

EUにおけるPFAS規制案へのコメント(2023年6月21日)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/044.html