【日本鉄鋼連盟】「我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」を公表
国際環境経済研究所
International Environment and Economy Institute
日本鉄鋼連盟は、2021年2月15日、「我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」を公表した。
詳細は下記または日本鉄鋼連盟のホームページを参照。
我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針
- ①
- 我が国の2050 年カーボンニュートラルという野心的な方針に賛同し、これに貢献すべく、日本鉄鋼業としてもゼロカーボン・スチールの実現に向けて、果敢に挑戦する。鉄鋼業としては、①技術、商品で貢献するとともに、②鉄鋼業自らの生産プロセスにおけるCO2排出削減に取り組んでいく(ゼロカーボン・スチール)。
- ②
- ゼロカーボン・スチールの実現は、一直線で実用化に至ることが見通せない極めてハードルの高い挑戦であることから、現在鋭意推進中の「COURSE50 やフェロコークス等を利用した高炉のCO2抜本的削減+CCUS」、更には「水素還元製鉄」といった超革新的技術開発への挑戦に加え、スクラップ利用拡大や中低温等未利用廃熱、バイオマス活用などあらゆる手段を組み合わせ、複線的に推進する。
- ③
- 我々が挑戦する超革新的技術開発
- 製鉄プロセスの脱炭素化、ゼロカーボン・スチール実現には、水素還元比率を高めた高炉法(炭素による還元)の下でCCUS 等の高度な技術開発にもチャレンジし更に多額のコストをかけて不可避的に発生するCO2の処理を行うか、CO2を発生しない水素還元製鉄を行う以外の解決策はない。
- 特に水素還元製鉄は、有史以来数千年の歳月をかけて人類が辿り着いた高炉法とは全く異なる製鉄プロセスであり、まだ姿形すらない人類に立ちはだかる高いハードルである。各国も開発の途についたばかりの極めて野心度の高い挑戦となる。
- また、実装段階では現行プロセスの入れ替えに伴う多大な設備投資による資本コストや、オペレーションコストが発生するが、これらの追加コストは専ら脱炭素のためだけのコストで、素材性能の向上にも生産性の向上にも寄与しない。
- ④
- ゼロカーボン・スチールを目指すための外部条件として下記が不可欠である。
- ゼロエミ水素、ゼロエミ電力の大量且つ安価安定供給
- 経済合理的なCCUS の研究開発及び社会実装
- ⑤
- ゼロカーボン・スチールを目指す上での政策として下記を政府へ要望する。
- 極めてハードルが高い中長期の技術開発を支える国の強力かつ継続的な支援、ゼロエミ水素、ゼロエミ電力の大量安価安定供給のための社会インフラ、経済合理的なCCUS の社会実装といった脱炭素化に向けた国家戦略の構築
- グリーンイノベーション基金の運用に際し、企業のチャレンジスピリッツを促進するような推進体制や制度設計の整備
- 技術開発の成果を実用化・実装化するための財政的支援
- ゼロカーボン・スチールの実現には研究開発や設備投資のほか、オペレーションコストも含め、多額のコストがかかることについての国民理解の醸成と社会全体で負担する仕組みの構築
- 電気料金高止まりの早急な解消をはじめ、我が国産業が国際競争上不利にならないようなイコールフッティングの確保
- 技術開発の原資や設備投資の原資を奪う炭素税や排出量取引制度等の追加的なカーボンプライシング施策の導入は、イノベーションを阻害し、結果的にゼロカーボン・スチールの実現に逆行する施策となる
以上