IPCC「1.5度報告書」の欠陥

印刷用ページ

(英 Global Warming Policy Foundation(2019/12/05)より転載
原題:「DEFICIENCIES In the IPCC’s Special Report on 1.5 Degrees」)

1. はじめに

 最近の、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による通称1.5度特別報告書、以下SR1.5と略)注1)は、気候変動についての警鐘水準を引き上げ、それに対抗するために過激な行動を呼びかけるという点で、それまでの刊行物すべてをはるかに上回っている。この報告は、気候科学の本質的な側面はすでに決着がついているという立場を採用し、必要な政策対応と考えるものを、持続可能な開発、貧困削減、格差低減といった倫理的な問題とごっちゃにする。
 報告は、今世紀半ばに炭素排出ゼロを実現するため、世界経済の過激な変化を呼びかける。この行動方策がもたらす、きわめて高価で転覆的な変化を考えると、その根底にある科学的な主張の厳密性に疑問の余地があってはならない。ここでは、SR1.5の中心的な側面のいくつかを検討し、その報告で提示された行動方針の規模にふさわしいほどの科学的な堅牢性を持っているかどうかを調べる。証拠に基づくと、そんな堅牢性はない、と結論される。

注1)
IPCC. Global Warming of 1.5◦C: An IPCC Special Report on the impacts of global warming of1.5◦Cabove pre-industrial levels and related global greenhouse gas emission pathways, in thecontext of strengthening the global response to the threat of climate change, sustainabledevelopment, and efforts to eradicate poverty. World Meteorological Organization, Geneva,Switzerland, 2018. https://www.ipcc.ch/sr15/.

続き(全文)はこちらから↓

IPCC 1.5 度特別報告の欠陥 改訂新版(PDF)

【 著者紹介 】
 J・レイ・ベイツ教授は、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの気象学および気候センターにおける気象学非常勤教授である。かつてはコペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所の気象学教授であり、NASAゴダード宇宙飛行センターの上級科学者も務めた。キャリア初期には、アイルランド気象局の研究主任だった。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンで物理学の学位を取得、MITで気象学博士号を取得。MITの博士号指導教官は、1979年に二酸化炭素が気候に与える影響について論じた「チャーニー報告」の著者ジュール・G・チャーニーだった。ベイツ教授は2009年ヨーロッパ地球科学連合のヴィルヘルム・ベルクニスメダルなど、科学的な業績で多くの受賞歴を持つ。アイルランド気象学会の元会長。IPCCの第3次および第5次評価報告の専門査読者を務めた。王立アイルランドアカデミーおよびヨーロッパアカデミーの会員であり、アメリカ気象学会フェロー、イギリス王立気象学会フェローも務める。

解説:キヤノングローバル戦略研究所 杉山 大志

 IPCCの1.5度特別報告書は、その科学的知見の取り扱いについて、重大な欠陥があったと指摘する論文。
 GWPFによる論文「IPCC 1.5 度特別報告の欠陥 改訂新版」の山形浩生氏による邦訳。

※ Global Warming Policy Foundationの邦訳記事一覧はこちら