「カーボンフットプリント制度」と「エコリーフ制度」


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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エコリーフ制度

 一方、もう一つの国の認定・ラベリング制度である「エコリーフ制度」は、カーボンフットプリントと同じくライフサイクルアセスメント(LCA:製品やサービスに対する環境影響評価の手法)により、製品のライフサイクル全体(資源採取から製造、物流、使用、廃棄・リサイクルまで)にわたる定量的な環境情報を、インターネットなどを通じて公開している環境ラベルです。(図5)

図5

(図5)エコリーフマーク 出典:産業環境管理協会

 日本生まれの環境ラベルで、もともと米国での公共調達の基準として国際標準化機構(ISO)に対応した環境ラベルの必要に迫られ、つくったと言われています。エコリーフ環境ラベルは、ISOで規定する「タイプIII環境ラベル」に属します。(図6)カーボンフットプリントは、地球温暖化対策に主眼を置き、温室効果ガスの排出量をわかりやすく表示する環境ラベルですが、エコリーフは温室効果ガスの排出量だけではなく、多くの環境負荷指標を用いて、製品の環境負荷を多面的に評価できるようになっています。評価はある基準をつくって合否判定するのではなく、客観的な環境情報やデータをインターネットなどで公開することに止めています。評価は製品の購買者や消費者の判断に任されています。

図6

(図6)ISOタイプⅠ、Ⅱ、Ⅲの特徴 出典:産業環境管理協会

 エコリーフは、事業者(メーカー)がグリーン購入・調達に活用し、環境負荷のより少ない製品を開発・製造・販売していくための動機付けとなることが狙いです。2002年に制度が開始され、カーボンフットプリント制度と同じく一般社団法人・産業環境管理協会が運営しています。(※カーボンフットプリントは、エコリーフでの経験を踏まえ、制度設計が行われました)

 登録・公開が可能になったエコリーフ環境ラベルは、製品登録番号が付与され、産業環境管理協会のホームページで公開されます。エコリーフのURLと製品登録番号から、誰でもエコリーフ環境ラベルのすべての情報を入手することができます。各製品のエコリーフの環境情報は、①製品環境情報、②製品環境情報開示シート、③製品データシートという3種類の様式で提供されています。(図7)

図7(図7)出典:産業環境管理協会[拡大画像表示]

 2002 年4 月より制度を開始して以降、順調に登録数は増えており、2016年6月17日時点で登録・公開したラベルの累計は 1743件を超えています。そのうち425件が海外輸出製品となっています。エコリーフ作成の基準となる、製品分類ごとに取り決められる製品分類別基準(PCR:Product Category Rule)は、82件が制定・公開されており、複写機や複合機をはじめ、パソコンやそのディスプレイ、食品用金属缶、自動販売機、紙製飲料容器、タイルカーペット等、製品は多岐に渡っています。(図8)

 ISOに対応したエコリーフ環境ラベルは、積極的に自社の環境経営をアピールでき、企業イメージの向上に貢献する期待があります。また、地方公共団体の物品購入指針に採用され始めたことから、エコリーフの登録・公開が販売力の強化につながってきています。ただ、エコリーフ環境ラベル自体についてまだ知らない消費者や事業者も多いことから、認知度を高めることが当面の課題とも言えそうです。

図8(図8) 出典:一般社団法人産業環境管理協会[拡大画像表示]

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