石炭火力の基礎知識
小野 透
(一社)日本鉄鋼連盟 特別顧問/日鉄テクノロジー株式会社 顧問
私たちの生活に不可欠な電気は、様々なエネルギー源(電源)から供給されています。各電源にはそれぞれに特徴(利点や欠点)を持ち合わせており、完璧な電源は存在しません。このため、それらの適切な組み合わせによって、相互の欠点を補いあいながら電気の安定供給を支えています。電源の中で、特に季節や時間帯、気象条件等によらず安定した電力を安価に供給できる電源をベースロード電源と呼び、我が国では石炭火力を始め、原子力、一般水力、地熱がこれにあたります。震災後、原子力発電の稼働率が低下している中で、石炭火力のベースロード電源としての重要性は増しています。
日本で消費される石炭のほとんどは輸入ですが、輸入先はオーストラリアやインドネシア、ロシア、北米など、政治的に安定した国々で(図1)、また輸入ルートに危険な場所も殆ど存在しない地政学的リスクの低いエネルギーと言えます。また価格も他の化石エネルギーに比べて安価でかつ安定しています(図2)。
ほとんどすべてのエネルギー資源を輸入に頼らざるを得ない日本にとって、安価で供給安定性に優れたエネルギーの確保は極めて重要な課題であり、私たちの生活や国内での産業活動を支える上で欠かせないのです。
日本の石炭火力発電比率の推移をみると、震災前で25%程度、震災後は原子力発電停止の影響もあり30-32%程度で推移しています(図3)。これを主要国と比べると、日本の石炭火力の比率はあまり高くないことが分かります(図4)。欧州では国によって電源構成に特徴がありますが、欧州全体ではバランスのとれた電源構成となっています。