市民力で南相馬復興へ!
ソーラーシェアリングと菜の花プロジェクト
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
―― 南相馬ソーラーヴィレッジの今後の計画は?
「9カ所でしっかり実績をつくることが大切です。また、さらなる普及を目指し、集落営農や農地の圃場整備と連携して設備を拡大していきたい。このため、1haほどの圃場で500kWの高圧連系ができないか、さらに農家が協力し合って共同購入と設置を行うことで、設置コストを抑えることができないか検討しています。ソーラーシェアリングのモデルケースとして、広く世の中にアピールしていきたいと思います」(高橋氏)
有名石鹸メーカーの新製品に
13年秋以降、南相馬市では「福島復興・菜の花プロジェクト」も進められています。チェルノブイリ原発事故後、ウクライナで菜の花を使って除染を行い、農業の再生を実践してきた取り組みを南相馬でも取り入れようと、地元有志らが南相馬農地再生協議会を立ち上げました。このプロジェクトには、えこえね南相馬研究機構や地元農業団体も協力しています。南相馬農地再生協議会の代表理事、杉内清繁氏に話をうかがいました。
「菜の花は土嚢中の水に溶けているセシウムやストロンチウムなどの放射性物質を吸収する能力が最も高いと言われる植物の1つです。放置状態だった圃場で雑草処理から始め、14年秋、15haにナタネを播種し、翌15年春、9トンの菜種を収穫しました。募金や福島県の営農再開支援事業を活用し、汎用コンバイン、トラクターの購入や委託による搾油を行いました。検出器の測定でも南相馬のナタネ油にはセシウムは検出されていません。遺伝子組み換えや薬品、添加物などの心配もありません」
同協議会が栽培、搾油した食用ナタネ油は「油菜ちゃん」として商品化されています。15年夏には石鹸メーカーのラッシュジャパンから、石鹸素地の原材料として油菜ちゃんを使いたいという話が舞い込みました。石鹸「つながるオモイ」は3月1日から数量限定で販売されています。
南相馬ソーラーヴィレッジや菜の花プロジェクトといった市民力を活かした取り組みは、農業やコミュニティの再生、経済的自立を目指す大きな力になっています。