市民力で南相馬復興へ!
ソーラーシェアリングと菜の花プロジェクト
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
(「月刊ビジネスアイ エネコ」2016年4月号からの転載)
東日本大震災から5年目の春を迎えました。東京電力福島第一原子力発電所事故により、今も多くの方々が避難している福島県南相馬市。ここで暮らす人たちを支援している2つの取り組みを取り上げたいと思います。
南相馬ソーラーヴィレッジ
農林水産省が農地転用にあたるとして認めていなかった農地への太陽光パネルの設置を認めた2013年4月以降、ソーラーシェアリング(半農半電)が広がりを見せています。
南相馬市原町区の太田地区では、震災と原発事故の影響による農業の減収を補うため、半農半電の推進モデル地区としてソーラーシェアリングが進められています。実に2年4 カ月の間に9カ所のソーラーシェアリングが稼働しています。プロジェクトを推進してきたのが一般社団法人「えこえね南相馬研究機構」です。
プロジェクトの第1号が稼働したのが13年8月。地元農家の奥村健郎氏と、同機構による「奥村農園発電所」(発電容量30kW)が運転を始めました。14年から計8カ所のソーラーシェアリング設備(総発電容量322kW)の系統連系が終了し、15年11月11日には、関係者を招いてお披露目会を開催しました。全9カ所の設備で東北電力に全量売電しています。
短期間に多くのソーラーシェアリングを実現できた理由を、同機構のコーディネーター、中山弘氏にうかがいました。
「ソーラーシェアリングは農家の協力抜きには成立しません。第1号の奥村氏が積極的に周辺の方たちに働きかけてくれたことが大きいです。奥村氏は、①ソーラーシェアリングをやりたい農業者のリクルート、②具体的な設置場所の選定と栽培作物の調整、③設備設置費の3分の1を農家が出資することの了解の取り付け、④土地使用承諾書への押印と回収、⑤地権者説明会の案内―などを行い、設置農業者を集めてくれました」
さらに「具体的な設置にあたっては、発電設備のレイアウト、作物収量が8割以上の証明、農業委員会との調整、設置工事の推進・管理、電力会社の連系の推進、資金のやり繰りなど、髙橋荘平代表理事をはじめ、えこえね南相馬研究機構の全員が協力して進めてきました」という。
ソーラーシェアリングの課題と展望
―― 一般にソーラーシェアリングは長期の融資を得るのが難しいと言われています。
「ソーラーシェアリングを設置した地権者はいずれも地元の優良農家です。ですから、金融機関の絶対的な信頼感がありました。地元の農家が設置するので、ちゃんと農業をやってくれるだろうと捉えてくれました。また、政府の助成金も利用しています」(同機構代表理事の高橋氏)
経済産業省資源エネルギー庁補助事業である、原発30km圏内を対象とした平成26年度「再生可能エネルギー発電設備等導入促進復興支援補助金(半農半エネモデル等推進事業)」は、原発周辺の自治体の再エネ設備設置に3分の1の補助をするものです。
「受けた補助金の半分は、地元のふるさと再興事業に充てるという条件がついていますが、それでも6分の1の実質補助となるのは助かりました。それで、当初 3 ~ 4カ所だった設置予定を、2倍の8カ所にすることができました。金融機関から融資を受ける上でも、助成事業の対象になっていることは信用が増すとともに、事業計画上の不安を少なくすることに役立ちます」(高橋氏)
――普及における課題は?
「農地転用許可を取るのは簡単ではありません。栽培実績を共有しながら、転用許可の加速を図りたいと思います。固定価格買い取り制度(FIT)に基づく太陽光の買い取り価格が低下していることから、設置へのモチベーションが下がっています。12~15年で投資を回収するには、イニシャルコストを税込み27万円/kW程度以下にしたい。小規模設備で収益を確保するのは大変ですので、メーカーにも呼び掛けて検討を進めています。また、ソーラーシェアリングを加速するような設置への助成事業にも期待しています」(高橋氏)