MENUMENU

インドの約束草案

排出削減の数値目標は「なりゆき」、先進国からの「支援が条件」


キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹


印刷用ページ

バングラデシュの約束草案

 インドの隣国であるバングラデシュの約束草案についても簡単に紹介する。
 排出削減については、バングラデシュは2段階の数値目標を掲げている。第1に、2030年になりゆき(BAU)比で5%の温室効果ガス削減をするとしている。第2に、先進国からの支援(資金、投資、技術開発と移転、及びキャパシティビルディング)を条件に、2030年になりゆき(BAU)比で20%の温室効果ガス排出削減をする(conditional emission reduction)としている(図2)。だがいずれも、総量では大幅な増加となっている。

図2 バングラデシュの排出削減目標(約束草案p4)

図2 バングラデシュの排出削減目標(約束草案p4)

 またインドと同様に、適応についても重視している。適応のための投資コストは2030年までに400億ドルと見積もっている。

日本人が知っておくべきこと

 インド、バングラデシュはともに所得水準は低く、経済開発が国としての最優先課題である。従って、インドが約束草案の冒頭で蕩々と3ページに亘って述べているように、いま野心的な排出削減を約束しないからといって、それは責められるべきものではない、という考え方にも正当性がある。また両国とも、防災水準も低いため、気象災害に対しても脆弱なので、排出削減ではなく、適応に関心が高くなることも理解できる。
 両国とも、それぞれの国の立場を踏まえて、適切と考える事を約束草案の内容としている。野心的な数値目標を掲げていないからといって、両国を批判することは建設的ではなかろう。
 日本が知っておくべき事は、パリ協定で全ての国が参加する枠組みが出来たといっても、その内実としては、全ての国が野心的な排出削減目標を掲げているわけではなく、かつ、支援を条件としている国もある、ということである。このことは、企業の国際的な競争力という観点からは、イコールフッティングは保障されていない、ということを意味する。日本がこれから国内の計画や法を整備するにあたっては、この現実を踏まえた上で対処することが肝要である。

※本連載・報文は著者個人の文責に基づくものであり、いかなる所属・関連機関に責が及ぶものではありません。

記事全文(PDF)



温暖化の政策科学の記事一覧