「再生エネの買取制度」どう両立
導入拡大と国民負担制御
小野 透
(一社)日本鉄鋼連盟 特別顧問/日鉄テクノロジー株式会社 顧問
―――資源エネルギー庁の審議会で今秋から、FITの法改正を含む抜本見直しに向け議論が始まったが、その論点は。
「制度改革の最大目的は再エネ導入拡大と国民負担抑制の両立にある。また設備認定を受けたにもかかわらず運転開始に至っていない滞留案件の対処や、今後の電力システム改革とのマッチングも解決すべき課題だ。このため①設備認定のあり方②買取価格決定方式の見直し③買取主体の変更④減免制度――の4つが具体的な論点になっている」
「①に関しては、設備認定を電力会社との系統接続契約後とすることで、より実現可能性のあるものに絞り込む狙いがある。また、単に設備を認定するだけでなく、電力供給に一定の確実性を持たせるべく、認定後の適正な事業実施のための順守事項なども議論されている。こうした見直しによって、とりあえず認定を受けておき、設備コストの変動をみながら運転を開始しようとしたり、運転開始後に売れるだけ売って、投資回収後は設備を放置するといった安易な事業者の排除が可能になる」
「②に関しては、太陽光以外のリードタイムの長いものについては数年先の買取価格をあらかじめ決めておいて、事業者の予見可能性を確保する一方で、投資リスクが小さい太陽光(非住宅)については、入札方式が提案されている、入札による競争原理によって、調達コストを抑えようという試みだ。ただ、入札方式の場合は導入目標量をきちんと設定することが不可欠となる」
―――電力多消費産業に対する減免制度では、その財源を国税に求めているが、賦課金上昇を背景に財源が拡大し続けていることもあり、今月開かれた財務省の審議会では、減免率の引き下げや対象業種の見直し、減免財源の賦課金への変更といった論点が示された。
「減免制度は法律の本則に入っており、いわばFITと一体のものといってよい。FITによる負担が拡大する中で、財源が厳しいから減免率を見直すというのは理屈が通らないのではないか。もちろん対象業種の見直しが必要というのは理解できる。確かに首をかしげざるをえない事業者が入っているからだ、一方、現行制度では年間電力使用量100万kW時未満の中小・零細の鋳物事業者などは、どんなに電力の占める割合が大きくても減免対象となっていない。こうした業者まで視界に入れると、対象を絞る一方で、対象を広げるという議論があってもおかしくはないだろう」
「減免財源を税金ではなく、FITの賦課金で賄うという考えは、結果として国民負担の増大につながる話であり、国民的なコンセンサスが必要となる。国際競争力や雇用などの観点から産業用電力をどう位置付けるのかという議論がなされるのであればまだしも、現在の減免制度を前提に、財源が不足するから賦課金へというのでは、その分負担が増えてしまう国民にとっても減免の対象となっていない中小事業者にとっても受け入れがたいのではなかろうか」
―――政府が示した2030年時点の望ましい電源構成では、再生エネの割合は22~24%。このうち太陽光は7%程度で、設備容量にすると6400万kW。これに対しFIT導入後の認定容量はすでに8200万kWに達している。
「認定の取り消しが一部で進むとみられるため、すべてが運転開始となるわけではないだろうが、認定案件の運転開始に伴い、賦課金はさらに増えていくことになる。今回のFITの見直しの中では主要な論点にはなっていないが、国民負担を軽減するという観点からも、導入目標量に対し認定量が上回る状況は問題だ。認定後一定期間を経ても稼働していない設備はいったん認定を取り消すことなども検討すべきだ。そうであれば1kW時当たり40円、36円といった高値の買取価格を今年度の27円に振り返るといった措置も可能となる。いずれにせよ再エネの導入拡大は必要だが、国民負担との両立も避けて通れない問題だ」
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- FITの賦課金減免制度
- 電力多消費産業の産業競争力に配慮するために導入された制度。製造業の場合、売上高1千円当たりの電気使用量(kW時)が製造業平均の8倍以上の事業を手掛ける事業所が対象。負担額の5分の1に減免される。電気使用量が年間100万kW時を下回る事業所は対象外。15年度は、1064事業者1856事業所が減免の適用を受けている。鉄鋼業は179事業者。同年度の減免対策予算は456億円。