エッフェル塔に風力発電
山藤 泰
YSエネルギー・リサーチ 代表
エッフェル塔がパリのシンボルであることは万人の認めるところだろう。126年前に世界博覧会を記念して建設されたときには、寿命20年で設計されていたそうだが、その後何度も改修補修を繰り返して優美な姿を見せ続けている。ここには一階部分にいろいろな店舗がある。また、中層部には有名なレストランがあるが、ここの夜の照明はテーブルを照らすスポットライトしかなく、夜景を楽しめるようにしている。このタワーに何か新しいものを付け加えるのは余程の理由がないと無理だろう。
だが、最近見た海外ニュースで、このエッフェル塔に風力発電設備が2基取り付けられたと知って驚嘆した。丁度改修の時期に入っており、その機会を捉えて実行されたというが、タワーを愛する市民の合意をどのようにして得たのだろうか。塔の外観を損なわないように、タワーの色とほぼ同じようなくすんだ茶色を使った縦軸型の発電機が、300メートルの高さがある塔の2層目120メートルの高さのところの中心部に、目立たないように設置されている。一基で縦5メートルほどのものらしいから、数キロワット出力のものだろう。高さがあるので絶えず風は吹いているだろうから稼働率は高いはず。ここからの電気は年間1万キロワット時ほどで、一階の店舗などで消費する電力はほぼ賄えると報じられている。風力に加えてLED照明の採用、太陽光発電パネル、太陽熱温水器も設置されるらしい。この温水も一階の店舗やレストランで消費される量の半分を賄うのに十分となるそうだ。さらには、雨水を貯めて雑用水に使ったり、付属建物の屋根の一部を透明にして自然光を取り入れるようにもするらしい。
フランスでは今年3月、商業地区に新しく建設されるビルの屋上には全て、太陽光発電を設置、それが無理なら緑地化することを義務づける法律が制定された。これは、太陽光パネルや植栽によって、ビル屋上の温度上昇を低減して都市部のヒートアイランドを抑制し、空調負荷を削減するためだという。パリ市は2012年以来市域をグリーン化する政策を打ち出しているが、エッフェル塔のグリーン化はそのシンボルとなるものだろう。これまで他の欧州諸国に比べれば進捗が遅かった太陽光発電の設置が促進されることも確かである。
ところで、日本にあるタワーがこのエッフェル塔のグリーン化に倣った方策を実施しないだろうか。関西在住の筆者としては、大阪の通天閣が風力発電を設置し、それを縁としてエッフェル塔と姉妹タワーになることができるかもしれないと夢想している。大阪市もグリーンエネルギーの導入には比較的熱心だから、行政が働きかければ案外実現するかも知れない。それをきっかけにして、グリーン化という方針を共有するパリ市と、タワーを介した交流が新しく生まれて観光客が増えれば嬉しいことだし、新しもの好きの大阪市民も歓迎することは間違いなかろう。誰か新しい火を付けてくれないだろうか。
下記のウエブから写真を見ることができる。
http://blogs.scientificamerican.com/plugged-in/eiffel-tower-going-green-with-two-new-wind-turbines/