電力事業用発電設備の変化


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 伝統的な発電事業で使われてきた発電設備の歴史を見ると、発電コストを下げるために発電設備の単機容量を増大させてきたことが分かる。規模の利益を生み出すことができるからだ。この場合、建設する発電設備の仕様が毎回異なるために、設計から建設までの時間が年単位と長くなるのは避けがたい。

 発電設備単機の発電規模が大きくなれば、比較的柔軟な制御ができる火力発電でも、出力を増減させるのには時間がかかる。需要変動に対応して出力を増減するのにも、比較的応答速度の速い天然ガス火力であっても、規模が大きいために数分といった短時間で増減させるのは難しい。発電所は、これまでも電力需要の増減に対応した稼動をしてきたのだが、その需要変動は過去の経験の蓄積からかなり正確に予測できるし、需要変動そのものの増減速度が大きくはなかったため、系統に起きた事故などの場合は別として、出力制御はとりたてて難しいものではなかった。

 ところが、風力発電や太陽光発電といった、予測がまだ難しい天候に左右されて発電出力が大きく増減する発電設備が系統に接続される量が増えると、それによって短時間に大きく変動する電圧や周波数を、素早く出力変化をさせにくい規模の大きい既存の発電設備の出力制御によって、電圧や周波数の変動を安定化させるのが難しくなる。規模が大きいために数分、数十秒といった短時間に出力を増減し難いからだ。その対応として蓄電設備の導入も試みられているが、そのコストはまだ非常に大きい。予測を超えた大きな出力変動に対応して系統を安定化させるために、発電設備をいつでも出力制御ができるように出力を絞って待機させることも多いが、安全を見越した待機をさせるために稼働率や発電効率の低下は不可避となる。この問題は発電事業がこれから対応しなくてはならない大きな課題となっている。

 大量の変動する再生可能エネルギーが導入されている米国でも、この出力変動への対応に苦慮しているのだが、最近、新しい緩和方式を紹介しているレポートが出ている。数万キロワット程度の比較的規模の小さな発電所を更新、あるいは新設する時に、数千キロワット規模のレシプロエンジンや天然ガスタービンによる発電設備を並列に数基設置して、数万~数十万キロワット規模の発電所にする発電事業者が幾つも出ているという。大型発電設備に代わって、複数の分散型発電設備を1カ所に導入しているのだ。GEのようなエンジンメーカーは、数百から数万キロワットまでのものを取りそろえていて量産体制に入っている。従って計画から設置稼動までの日数も、集中型大規模のものに比べて大幅に短くなる。

 例えば、テキサス州のある発電事業者が設置したものは、6基のガスエンジン発電機が並列になっていて、総発電規模は5万キロワットを上回っている。停止状態から稼動を開始して定格規模にまで達するのに5分しかかからない。また、出力を上下させるのに必要な時間は秒単位であるし、需要がないときには一部の設備を停止させておくこともできるために、燃料消費を抑制する効果も大きい。発電効率も49%と、古い火力発電設備に比較して高い。このような設備が都市部に設置される場合には、設備の規模さえ適切に選べば、排熱を回収するコージェネレーションにすることも可能となり、エネルギー効率は80%ほどと極めて高くなる。ニューヨーク市などの都市部に実例があるようだ。

 天候に出力が左右される再エネがこれから大量に導入されると想定されている日本でも、このような分散型発電システムを発電所へ大量に導入することによって系統安定化を実現することが有効な方策の一つとなるのではないか。日本の電力会社もこのような方式導入を計画していると推察するが、その促進を図ることによって、電力系統の安定性を保ちながら変動する再エネの導入拡大を実現してほしいと期待している。

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