核燃料サイクル政策のあり方についての提言(第8回)

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 前回(第7回)ではわが国の核燃料サイクル開発には必要不可欠である技術・産業基盤整備意識が欠如していることを指摘し、早急に基盤整備のあり方についての議論を進めるよう提言した。今回は2016年を目標とする電力システム改革により、核燃料サイクル開発は画期的変革を迫られていることから、民間活力のあり方を含め、国全体を通じ一貫した体制再編成の課題を追求する。

日本の核燃料サイクル開発体制を取り巻く環境は大きく転換しようとしている

 過去の原子力開発の実務展開を顧みれば、ことの是非に対する判断は別にして、総括原価方式料金制度はわが国の原子力発電推進に極めて効果的に働いてきた。この制度の下で、1970~90年代の原子力産業界は大変な活力を発揮し、軽水炉50基時代を築き上げた。
 今後の電気事業運営にあっては、原子力発電開発に関するだけでも、1F事故を踏まえた安全性改善強化、さらに電力市場の中での競争力確保が必要である。この目的のためには経年炉も含めて高い稼働率(平均80%以上)を維持する必要があり、運転保守技術水準の高度化が必要である。経営的に原子力運営に特化したより高度な対応が求められることになる。
 電気事業者はこのような経営環境への対応に加えて、財政面でも切迫した状況にあることは事実であり、核燃料サイクル開発分野から手を引くという選択肢もあり得る。しかし当面の課題である日本原燃(六ヶ所再処理工場)の事業体制強化には、将来的には商業ベースによる運営達成という目標があり、そのためには民間の活力が基本的条件である。高速炉開発(もんじゅ)についても、電気事業者の軽水炉運用の実務経験を生かすことが必須条件である。財政面での支援など国としての関与は不可避であるとしても、民間事業としての経営ノウハウ、人的資源の活用なしでは核燃料サイクル開発は成立しない。基本的認識としていえることは、国内外の核燃料サイクル開発体制を取り巻く環境は大きく転換しようとしていることである。国は2016年の電力システム改革を契機として、原子力開発の長期展望の下で核燃料サイクル開発に関し前進基調の本流となる国全体を通じて一貫した体制再編成のあり方を見極め、必要な整備を急ぐべきである。その際留意すべき基本的項目は以下の通りである。

(1)
国内外の核燃料開発環境変化の本質を確認する。
(2)
2016年電力市場自由化後の原子力発電・サイクル開発体制改革の全体像のグランドデザインと官民役割分担のあり方。特に核燃料サイクル開発に関しては、事業主体(再処理・MOX工場ともんじゅ)のあり方(独立性)と責任者の責任、権限。
(3)
原子力発電所新増設、核燃料サイクル開発における電気事業者を含む民間事業者のあり方。信頼性ある技術・産業基盤構築と官民役割分。
(4)
核燃料サイクル開発はまだ途中の段階にある。今後のプロセスにおける民間活力の生かし方。
(5)
官民の役割分担を担保する国としての基本的措置。
(6)
開発推進に必要な人材確保。海外技術者の導入。

{提言}
 過去60年のわが国の原子力開発では、電気事業者は発電能力増強の実務面で圧倒的な主導性を発揮してきた。しかし総括原価方式料金制度の廃止、電力システム改革などによりかってない経営転換に迫られており、状況次第では核燃料サイクル開発から手を引く選択もあり得る。しかも六ヶ所再処理プロジェクトの場合、本格運転達成までには予想を超える技術的問題への対応による財政的リスクに遭遇する可能性は否定できない。国の関与は避けられない状況にあるものの、これまでの実務面での実績・経験から民間の活力は不可欠という事情がある。一方もんじゅは元々国の研究機関によるプロジェクトであるが、発電所規模にあることから、電気事業者による民間活力の活用は基本的条件である。国はこの機会にサイクル開発体制・事業再編についての抜本的改革に着手すべき状況にあるが、民間活力の活用次第ではサイクル開発が頓挫するなどの重大な影響を与える可能性がある。SNF処分という国家的使命を担う以上、核燃料サイクル開発に失敗は許されないであろう。最も現実的、合理的かつ有効な民活利用、官民役割分担のあり方を見極める必要がある。

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