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核燃料サイクル政策のあり方についての提言(第4回)


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 前回(第3回)では六ヶ所再処理、もんじゅ両プロジェクトの現状と今後の課題を提示した。六ヶ所再処理は本格運転への見筋が見通せる状態にあるものの、仏からの技術導入に伴う脆弱性克服が重要課題であり、独立性の高い事業組織とすることの必要性を指摘した。一方もんじゅについては、大規模な原子力発電所であることと、高速炉開発という新技術実証の両役割を完全に整合させ、責任所在を明確にした新組織体制の再編成を最優先に考慮すべきことを指摘した。今回以降は前回までの現状評価と指摘した課題をふまえ、具体的な政策提言の段階に進めることとする。最初は使用済燃料の適切な処分はエネルギー安全保障の基本的条件であることを主題とする提言を行う。

 先ずは2014年2月エネルギー基本計画において示された新政策(SNF問題の解決に向けた取組の抜本強化と総合的な推進)の要点は以下の通り。

(高レベル廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化)

放射性廃棄物処分制度を創設して以降、10年以上を経た現在も処分地選定調査に着手できていない。
将来世代の負担を最大限低減するため長期に亘る制度的管理(人的管理)に依らない最終処分を可能な限り目指す。
現時点では地層処分が最も有望との国際認識の下、地層処分を前提に取組を進めつつ、可逆性・回収可能性を担保し、今後より良い処分方法が実用化された場合に、将来世代が最良の処分方法を選択できるようにする。

(SNF貯蔵能力の拡大)

高レベル廃棄物の最終処分プロセスには長期間を必要とする。その間も発生するSNFを安全管理する必要があり、貯蔵能力を強化する。具体的には発電所敷地内外を問わず、新たな地点の可能性を幅広く検討しながら、中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設・活用を促進するとともに、そのための政府の取組を強化する。
SNFの長期的リスク低減のため、その減容化・有害度低減が必要である。こうした課題に的確に対応し、その安全性、信頼性、効率性を高める技術を開発することは、SNF対策の柱の一つとなり得る可能性がある。具体的には高速炉や加速器を用いた核種変換などの技術の開発を国際的なネットワークを活用しつつ推進する。

(核燃料サイクルの推進)

わが国は資源有効利用、高レベル廃棄物の減容化・有害度低減等の観点からSNFを再処理し、回収Pu等を有効利用する核燃料サイクル推進を基本方針としている。
もんじゅについては、これまでの取組の反省や検証をふまえ、あらゆる面において徹底的な改革を行い、国際研究協力の下、もんじゅ計画に示された研究成果を取りまとめることを目指し、実施体制の再整備や新規制基準への対応など克服すべき課題について十分な検討、対応を行う。
サイクル関連諸課題は中長期的な対応を必要とする。技術動向、エネルギー需給、国際情勢等様々な不確実性に対応する必要があることから、対応の柔軟性が必要である。状況の進展に応じて戦略的柔軟性をもたせながら対応を進める。

 本エネルギー基本計画は、SNF問題が逼迫化している状況は放置できないという考えに基づき、とりあえず表面的課題を羅列したという印象である。国の政策としての本格的議論はまだまだこれからである。しかし、核燃料サイクル開発に関しては、関連諸条件の不確実性をあらためて認識し、状況の進展を見ながら柔軟に対応するという表現になっている。
 既に2万トンに近いSNFが処分の見通しもないまま、主に発電所サイトに貯蔵保管されている。日本は国際的に突出した基数の軽水炉を建設・運転してきた原子力大国であること、日米原子力協定により非核保有国では唯一SNF再処理が認められていること、他の非核保有国に比べれば、単独でサイクル開発を進めてきたという特殊な経緯からして、国際的にも主対的にSNF処分問題解決に正面から取組むべき立場にある。

SNF最終処分への道筋をつけることがエネルギー安全保障の基本的条件である

1. SNF処分の解決責任を次世代に先送りすることは許されない

 SNFを将来的に如何に処分すべきかは、わが国が原子力利用を継続する上での最重要課題である。2011年3月11日の東日本大震災に伴って発生した1F事故は、あらためてわが国のサイクル開発が混迷状態にあることを浮き彫りにすることとなった。さらに電力システム改革という電気事業経営に重大な影響を与える要因の出現は、燃料サイクル開発の将来見通しを全く不透明にしている。この混迷状態を収束させ、適切な核燃料サイクル開発の道筋を付ける上で必要なことは、「SNFの適切な処分のあり方は、原子力発電の安定な運営にとって欠かせない要件であり、まさにエネルギー安全保障を確実にするための基本的条件である」ことの再認識である。国は最も合理性ある核燃料サイクル開発の将来目標、即ち「SNF処分後に最終的に残る高レベル廃棄物の環境負担をミニマムに抑えるよう措置する」ことをあらためて国民に明示し、理解を得る必要がある。
 SNFはそのままでは現世代が享受した経済成長の負の遺産として残るばかりであり、その解決を次世代に丸投げするようなことがあれば、許し難い現世代の責任逃れとなる。SNF処分方策の実用化開発には数十年オーダーの長期間を必要とするが、政策として最終目標にむけての開発工程の筋道を明示し、工程を着実に進めるための国としての明確な意思表示を行うべきである。

2. 六ヶ所再処理、中間貯蔵はあくまでもSNF処分工程の中間的措置である

 六ヶ所再処理工場で成形加工したMOX燃料は、軽水炉で燃焼後は中間貯蔵施設で貯蔵保管される。同工場処理能力を超えて発生する軽水炉SNF貯蔵保管のためのバッファー措置の目的もある。既に2万トン近いSNFを抱え、今後の継続的発生を考えれば、中間貯蔵施設増強は差し迫った国家的要求である。しかも無期限な貯蔵保管を期待することは不可能である。その意味では軽水炉SNFの再処理も、中間貯蔵もあくまでもSNF処分という全体的な開発プロセスの中間的措置に過ぎない。現状では中間貯蔵期間経過後のSNFの行く先は全く決まっていない。中間貯蔵施設の立地は可成りの困難が予想されることを考慮すれば、中間貯蔵期限経過後のSNF処分の行く先を明示することは、立地地元の合意を得る上で重要な条件である。行く先不明では、立地地元の合意をとることは殆ど不可能である。

3. SNF最終処分への道筋には2つの選択肢がある

 選択肢の第1は直接処分であり、第2は高速炉サイクルである。高速炉サイクルはSNF再処理で最終的に発生する高レベル廃棄物の減容・有害度低減に期待されるが、実用レベルでの実証性はまだない。もんじゅに続く仏ASTRID計画への参加と、国際協力の効果が期待されている。国際的視点からすれば、激動する昨今の国際情勢にあって、核不拡散・核セキュリテイ政策に慎重な米国政府の国際政治主導の立場があり、日米仏同盟国間でさえ統一したSNF処分方策について合意が得られるような状況にはない。国情の差もあるが、SNF処分に関しては日本は最も厳しく、差し迫った状況にあることは間違いない。何れの方策も現状では多くの解決すべき課題を残しているが、将来の方向性については十分に議論が尽くされてはいないので、当面はわが国としては2つの選択肢への同時並行的取組を進めるべきである。国情に適合する最終処分のあり方としては、最終的に残る高レベル廃棄物について、環境負担をミニマムに抑えることにある筈である。その意味で高速炉サイクルの自主的開発を優先して継続することを政策として明示すべきである。高速炉技術の実証には(高速炉SNFの再処理開発を含めて)まだ相当の時間的距離を残しているが、常陽で自主的に経験した初期の高速炉技術実績は貴重な国家的資産である。もんじゅに続く高速炉開発の道筋としては、仏ASTRIDへの協力を側面におきながら、実証炉、実用化への継続的な開発の道筋を描くべきである。実用化目標は、バッファーとしてのSNF中間貯蔵施設の時間軸上の位置づけを考慮すれば、2060~70年頃とすべきであろう。

{提言}
 SNFの適確な処分方策は、原子力利用継続の上で必要不可欠な条件であり、エネルギー安全保障の基本的条件である。処分方策の目的は、最終的に残る高レベル廃棄物による環境負担を最低限に抑えることとすべきである。当面六ヶ所再処理工場で処理しきれないSNF、および軽水炉での使用済MOX燃料は中間貯蔵施設を増強して対処することとしているが、これも立地選定上の困難性が高く、国が前面に立って対応する必要がある。立地点選定が可能となっても、無期限の貯蔵保管が可能とは考えられない。SNF処分方策としては直接処分と高速炉サイクルの2つの選択肢があるが、当面わが国は両方策の開発を併行して進めるべきであろう。特に最終廃棄物の減容・有害度低減が期待される高速炉サイクルの実用化開発には数十年を要するが、2060~70年を目途として着実な開発を進めるべきである。
 国は緊急を要する中間貯蔵施設設置を積極的に進めると共に、その後の措置として、SNF処分で最終的に残る高レベル廃棄物について、環境負担を最低限に抑えることを目標とする高速炉サイクルの実用化開発を進めることを明示し、国民の理解を求めるべきである。

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