放射線と放射性物質(その3) 自然放射線と主な放射性物質


国際環境経済研究所主席研究員

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2) 天然放射性物質
 天然の放射性物質として、長寿命のため宇宙創成以来存在しているカリウム40(40K)、ラドン(Rn)、 ラジウム226(226Ra)、ラジウム228(228Ra)、鉛209(209Pb) などがある。
 40Kは天然のカリウム中に0.0119%存在しており、地球誕生時はもっと比率が高く、半減期12.77億年から推定して今の12倍(2 46/12.77)はあったはずであり、46億年を経て今の比率になっている。体内のカリウム総量は体重の0.2%で一人当たり100~150g程度であるが、放射性カリウムの量を計算すると12~18mg、前回紹介した計算方法により放射能を計算すると3,000~4,700Bq/人、体重1kgあたりでは50~60Bqになる。仮に46億年前に現在と同じような生物がいたとしたら、その体内の放射性カリウムは体重1kgあたり600~700Bqという値になる。

人体中のカリウム放射能量
(a”) [40K 1gの原子数]=[6.02214×1023]÷[40]=[1.506×1022個]
(b”) [40K 1gの放射能量]=[0.69315]÷[4.03×1016秒]×[1.506×1022個]=2.59×105Bq
40K 12mg~18mg=259,000Bq×(12~18)mg÷1,000=3,100~4,660 Bq

 40K以外の天然放射性物質として希ガスのRn、ウランの崩壊物である226Ra、トリウムの崩壊物の228Ra、ネプツニウムの崩壊物の209Pb (鉛209) などがあり、ラドン温泉、ラジウム温泉としてある種の病気療養などに利用されることがある。秋田県の玉川温泉、鳥取県の三朝温泉が有名である。玉川温泉では癌の民間療法として岩盤浴が行われている。ホルミシス効果といって低線量の放射線に継続的に被ばくすることにより、人体の免疫機能が向上すると言われている。
 また鳥取県と岡山県の境にある人形峠には低品位ではあるがウラン鉱脈があって、国産の核燃料資源として一時期採掘が行われていた。この地域の一部に放射線の高い地域がある。これら重金属の放射性物質は骨細胞に蓄積しやすい。当然、それぞれの分布に地域差がある。図は新幹線で移動しながら線量率を測定した結果でかなり変動しているが、トンネル通過時は花崗岩などに多く含まれる放射性物質が影響して高めになる。

「はかるくん」による新幹線内での自然放射線量率の測定例

6.主な放射性核種の物理学的半減期と安定同位体

 自然放射線の原因になっている主な原子核と、核分裂生成物のうち注意が必要な原子核について、それぞれの半減期と崩壊型、安定化後の原子核、同じ各種の放射性同位体および安定同位体を一覧表にした。半減期が長いほど安定な原子核である。たとえば14Cはその半分の量の原子核が安定な窒素原子に変わるまでに5,730年かかり、 40Kはそれが12.77億年ということである。

 特殊な例を除いてそれぞれの原子には多くの同位体(同じ性質を持ち質量数の異なる原子核)が存在する。質量数の違いにより放射性だったり安定だったりする。表中下線で示したのが安定同位体である。たとえば、炭素には質量数が11から14まで4種類の同位体があり、そのうち12C, 13Cが安定同位体、11C, 14Cが放射性である。β, β, ECなど壊変の意味は後述する。

 なお、表中14C、40K、222Rn、226Ra、228Raは天然放射性物質、第二次世界大戦後に検出されるようになった90Sr、131I、134Cs、137Cs、Puは人工放射性物質である。

20150223

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