環境と経済が両立に向かう『土壌汚染対策』とは(その2)

諸外国で進む土壌汚染跡地の再開発と経済効果


株式会社FINEV(ファインブ)代表取締役

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≪欧州≫
 欧州でも過去の産業跡地や軍用地などの環境汚染対策と再開発は、欧州地域内の持続的な発展においても重要だという認識が広がっており、ブラウンフィールド再生を進める研究が進められています。

 もともとイギリスでは産業跡地の再利用推進を進めており、汚染原因者でない土地購入者が土壌汚染や有害物質がある土地を購入し、汚染の浄化等を行った場合、浄化費用の150%を損金算入できる租税措置を取ってきました。この背景としては、イギリス政府が新規の開発による自然破壊を抑えるため、新たに建設する住宅の70%以上をすでに利用されている土地(ブラウンフィールド)に建設するという目標を掲げたことがあります。
 前回も紹介したロンドンオリンピックサイトは、英国王立チャータード・サベイヤーズ協会(RICS)がとりまとめたオリンピック開催地における都市再開発の成功事例として紹介されています。
 欧州では、各国でブラウンフィールドの定義が少しずつ異なっており、定義によって各国政府の政策や財政支援の対象が異なるため、各国の定義を地図上に示し、管轄行政や連絡先を提示しています。欧州内にはメガサイトと呼ばれる大規模な汚染サイトが約2万あるといわれており、土壌汚染の浄化と再開発がうまく進んだ事例の共有化も進められています。この取り組みには米国のブラウンフィールド専門家も参画しており、米国と欧州ではブラウンフィールドの開発に関する知見が共有されるようになっています。

 米国では汚染懸念サイトは100万あると言われ、深刻な汚染サイトは約45万といわれています。欧州には約300万の汚染サイトがあり、深刻な汚染サイトは約25万あるとされています。米国や欧州でブラウンフィールド開発が進められた背景には、土壌汚染の規制が日本よりも早く、産業構造の変化と共に汚染の懸念のある土地の浄化や再開発が進まなかった時期が早かったためです。
 日本国内にも潜在的な土壌汚染サイトは、民有地だけで約30万あると言われています。日本国内の土壌汚染対策法が制定されて11年が経過し、産業構造の変化と共にブラウンフィールド再開発の仕組みも必要になってきていると思われます。

参考米国ピッツバーグ市の事例_mini

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