原子力問題の今 -課題と解決策-(その2)


国際環境経済研究所前所長

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月刊『世界と日本』No.1239からの転載)
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官民のリスク分担

 リプレースについては、商業的な事業として原子力を継続することですから、官民でのリスクの分担はバックエンド問題に比べれば、より民間側がリスクを負担しなければならないでしょう。
 民間の金融資本市場の存在は第2図の右上部の方に示してあります。前述したように、自由化が進んでいくということになれば、設備投資に投下する資金の回収を担保した総括原価主義による料金規制や一般担保という措置が廃止されることになりましょう。そうなると、特に5千億円以上もの初期投資を必要とする原子力においては、そのファイナンスが可能かどうかという点が極めて重要なポイントになってきます。世界中のどこを見渡しても、原子力発電については、プロジェクトファイナンスが可能となった例というのはありません。
 ファイナンス・リスク分担を図るため、アメリカにおいては、新設される原子力発電所の建設投資に対して政府の債務保証という支援策が講じられることが、つい先日発表されました。また、イギリスでも、債務保証に加えて、新規の原子力建設に当たっての新しい金融支援方策が発表されました。それはストライク・プライスという一種の固定価格買取制度に近いような総括原価主義的引取価格保証制度です。それは、新設原子力発電所から生み出される電気について、その価格を政府と事業者が交渉して決め、市場価格とその合意価格との差が事業者に有利になれば事業者はその利益を政府に納め、逆の場合には政府が事業者の損失を補填するといった方式です。
 諸外国では、温暖化対策や供給力不足対策として原子力発電が再び新設されようとしていますが、このような政府介入によって、原子力発電に関する金融的なリスクがヘッジされているわけです。日本でも、今後自由化のもとでリプレースをやっていくとすれば、総括原価主義による料金規制に当たるような何らかの金融補完措置というのがどうしても必要になってくるというのがここでのポイントです。