原子力問題の今 -課題と解決策-(その1)
澤 昭裕
国際環境経済研究所前所長
原子力規制委員会のこれまでの規制活動の在り方を見ていると、手続きの不透明性、あるいは判断基準のぶれ、あるいは規制変更の不透明性がまだまだ払拭できていません。例えばバックフィットを巡る手続きがどのように決まったのかという問題や活断層問題についての調査方法や評価手法、さらにハードウェアの基準についても相当のブレが見られます。今後ともそういう状況が続いていくとすると、原子力を事業として続けていくために不可欠な規制活動の予測可能性が損なわれ、それによって事業者の経済的損失(ひいては国民負担となる)が引き起こされてしまいますし、将来に向けての投資に関する意思決定にも悪影響が及ぶことになるでしょう。原子力規制委員会の規制の在り方について、第三者特に原子力委員会が果たすべき役割は重要なものがあります。しかし、今後原子力委員会の役割や任務が改革・縮減される中、上に述べた規制の在り方に関して意見を述べる機能が失われるのであれば、そうした役割を担う行政組織を新たに設立すべきでしょう。
以上、原子力を維持するために解消することが必要となる三つの不透明性の解消を説明しました。この三つの不透明性は個別に除去していっても足りない、すべての点についてまとめて解決しなければならない問題だと認識しています。
原子力課題総合解決フレーム(原子力事業環境整備法案)の提案
こうした不透明性を払拭しつつ、今後原子力を持続可能な事業とするために必要な環境整備を検討したものが、第2図の原子力課題総合解決フレームです(21世紀政策研究所報告書「原子力事業環境・体制整備に向けて」(2013年11月) 参照。その報告書では、第2図に掲げている政策措置のうち、法律事項について「原子力事業環境整備法案」という形でまとめて国会提出してはどうかという提言をしています。
この図に記載されているすべての政策措置を組み合わせて、原子力問題の総合的解決策を実現していかねばならないわけですが、今年の年末までにある程度政策措置が全部出揃うことが必要です。というのは、電力システム改革はスケジュールどおり進んでいるので、原子力問題を同時並行的に考えて調整をつけていく観点からすれば、第三段階の電気事業法が改正される来年の通常国会、この段階で原子力についての政策的な必要措置もある程度議論がまとまっていなければならないのではないか、というのが行政的なスケジュール感覚だからです。