原子力問題の今 -課題と解決策-(その1)
澤 昭裕
国際環境経済研究所前所長
(月刊『世界と日本』No.1239からの転載)
はじめに
去る2014年2月に政府の原子力委員会第7回定例会で、「原子力事業環境・体制整備に向けて」というタイトルでプレゼンテーションと質疑を行ってきた。以下はその時のやりとりをもとに編集したものである(そのため口語体、デスマス体を採用していることをご容赦いただければありがたい)。
私の政策的な立場は、我が国のエネルギーミックスを考えるうえで、原子力は政策的な選択肢として維持しておくことが必要だというものです。
ただし、ここではその必要性を説くことは避け、むしろ原子力が必要だということを前提とします。そのうえで、原子力を維持していくとすれば、どういう条件が必要になってくるのかを考えていきたいと思います。
原子力を巡る政治的不透明性
現在、原子力を巡っては、大きく分けて、次に挙げる3つの不透明性があるのではないでしょうか。その不透明性を払拭していかなければ、原子力の維持は非常に難しいという認識を持っています。
1つ目が政治的不透明性、2番目に政策的不透明性、3つ目に規制的不透明性です。第一の政治的不透明性は、依然として脱原発、反原発というのが政治的なイシューになるという状況が変わっていないということです。この前の都知事選でも一つの争点になりました。民主党政権から自民党政権に移ったら原子力推進に戻るだろうというような見方が一般的だったわけですが、私自身そういうふうには見ていません。再稼働問題については確かに今の政権の方がより積極的だとは言えるかもしれませんが、中長期的な原子力政策については、まだはっきりとした政治的な意思が表明されていません。その意味では、民主党時代という状況はまだ変わっておらず、政治的にはまだまだ非常に不透明な状況が継続していると言えるでしょう。
さらに私は、日本が原子力の平和利用に乗り出すことを決めた1950年代やその後の60年代に比べれば、原子力についての政治的な支持は非常に風化していると考えています。今後とも原子力を維持・深化させていくとすれば、予算や法案を国会で通していくことがどうしても必要になってきます。したがって、原子力一般に対する政治的な支持を、どうやってもう一度再構築するかが最大の課題ではないかと思います。