英国で考えるエネルギー環境問題
私的京都議定書始末記(その40)
-進まない非公式協議-
有馬 純
国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授
エスピノーザ議長による非公式コンサルテーション
以上の2つの論点はいずれも京都第二約束期間の取り扱いと直結した問題であるが、交渉全体を見れば他にも大きな論点がある。コペンハーゲン合意に盛り込まれた諸要素(先進国、途上国の緩和のMRVの方法、資金援助、技術援助、キャパシティビルディング、適応、共有のビジョン等)をどのようにCOP決定に書き込んでいくかということだ。
このため、議長国メキシコは交渉2週目から、京都議定書とアンカリングについては英国とブラジル、緩和/MRVについてはニュージーランド、インドネシア、適応についてはスペインとアルジェリア、資金・技術・キャパシティビルディングについては豪州、バングラデシュ、共有のビジョンについてスウェーデン、グレナダを共同ファシリテーターに任命し、各交渉グループとの調整を命じた。前回書いた英国のヒューン大臣・ブラジルのマシャド局長のコンビと日本との議論もこのコンテクストの中で行われたものである。
2週目半ばの12月8日午後にはメキシコのエスピノーザ外務大臣を議長とする40-50カ国から成る非公式コンサルテーションが開催され、各項目の共同ファシリテーターから調整状況の報告があった。予想されたことだがこの時点では議論は全く収斂していない。エスピノーザ議長はファシリテーターに対し、引き続き調整を継続し、深夜までにレポートバックすることを要請した。