原子力の将来へ不透明性を拭え


国際環境経済研究所前所長

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分かりにくい規制委の活動

 第3は規制的不透明性だ。確かに、東京電力の事故処理の遅れで損なわれた原子力全般への国民の信頼を回復することは重要だ。そのため原子力規制委員会も事業者に厳しい姿勢を取ろうとしているのは理解できる。だが、規制委の役割は、原子力施設を廃止に追い込んだり稼働を阻んだりすることにあるのではない。安全に稼働する条件を確立し、事業者による順守を検証するのが本務なのだ。

 原子力の事業リスクを低減するには、規制活動の予測可能性が不可欠なのに、規制委の活動を見ていると、諸手続きの不透明性や不確定性、判断基準のブレ、審査・審議記録の不全などが目立つ。

 バックフィット(遡及適用)をめぐる手続きの決まり方や、活断層・地震に関する調査・評価プロセスにはいろんな批判が聞こえてくる。規制活動は科学的・工学的な視点から客観的に行われるべきで、被規制者側が「恭順の意」を示すかどうかで規制者側の判断が左右されるといった旧態依然の規制活動などあってはならない。

 以上、3つの不透明性は相互に連関する問題だ。これからの原子力政策はこれら全体をにらんだ総合的解決を必要としている。

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