オバマ政権の環境・エネルギー政策(その14)
原子力等への対応に関する政治動静
前田 一郎
環境政策アナリスト
新規建設の課題とボートル発電所建設
そうした中で30年の空白ののち、サザンカンパニーにより、ボートル発電所3号・4号の建設が始まった。先にも紹介した原子力・エネルギー問題では定評のあるマシュー・ウォルド記者がインターナショナルヘラルドトリビューン紙で詳細な報告をしている(2013年6月13日付け)。ウォルド氏は多くの原子力が引退に向けて進む中、ボートル発電所建設は「最後の、最大の期待」と述べている。プロジェクトで肩を組むフロリダの自治体が経営する電力の共同体役員は、これが成功すれば他のモデルになると評価、ウォルド氏は逆に失敗すれば他のプロジェクトが動き出すのにさらに数年待たなくてはいけなくなると指摘している。既設のボートル1号・2号が現場での組み立てをしたのに対してボートル3号・4号は工場で組み立てサイトに運ばれ、溶接を済ませてから世界最大のクレーンで設置される、モデュラー加工建設が採用されている。しかし、3分の1程度の建設が済んだ今でもすべてが予定どおりに進んでいないのは明らかだと言う。金利が歴史的に低下していること、リセッションで資材・労賃が低いレベルにあることで救われていると報じている。とはいえ、ボートル3号・4号の工事費は100億ドル高くなり、3号は2017年に建設を終了する予定だが、14ヶ月遅れているのが現実である。
小型モデュラー炉(SMR)開発への期待
オバマ政権は小型モデュラー炉ライセンスを原子力政策のなかでもっとも重要な部分であると位置づけている。小型モデュラー炉を商業的に開発可能なものとしようとしている。2014年にはエネルギー省はすべてのプロジェクトにライセンスを与えることとしている。エネルギー省原子力エネルギー部はライセンスを付与されたプロジェクトについて、まずサイトを具体化させ、次に概念設計を完了させ、設計認可申請を提出させようとしている。小型モデュラー炉は、固有安全性を有し、従来の炉型より一層安全性の面で優れているという観点から政府および民間に注目され、推進されている。これに呼応して小型モデュラー炉(300MW以下と定義)に関してバブコック&ウィルコックス、ウェスティングハウス、ニュースケールなどから多数のアイディアがエネルギー省に対して提出した。このうち2012年11月エネルギー省はバブコック&ウィルコックスに対して同社が開発したmPower設計に対して、エネルギー省として設計、認可、ライセンス付与し、コストの一部を負担することを決定している。すでにテネシーリバー開発公社と協議が進んでおり、かつて高速増殖炉が計画されたテネシー州クリンチリバーにおいて180MWを2基採用する計画となっている。2021年までに合計6基のmPowerの運転が予定されている。政府としては米国の原子力輸出の支援にもつながること、さらに米国にとって重要なのは核不拡散面からの要請に対応できていること(提案されている小型モデュラー炉は、長期間燃料を取り出さない)また小型老朽石炭火力閉鎖の動きにも対応できることが小型モデュールの長所とみなされている。
いずれにしても、エネルギー省はmPowerに加えて、2013年6月4プロジェクトを選択した旨発表し、全体で350万ドル(民間側コストの20%に相当)までが負担されることになった。今回エネルギー省が支援を決めたプロジェクトは以下の4つである。
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- ジェネラル・アトミックス(カルフォルニア州サンディエゴ)
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- GE・日立原子力エネルギー(ノースカロライナ州ウィルミントン)
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- Gen4 エナジー(コロラド州デンバー)
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- ウェスティンハウス(ペンシルバニア州ピッツバーグ)
これらのプロジェクトの選定は2013年1月の8つの新型炉コンセプトの研究開発に関するレビューパネルレポートに基づいている。とくにこの中でもGen4 エナジーは基本的にはロスアラモス国立研究所の協力を得て知的資源が活用された。70MW熱出力(25MW電気出力)の10年間燃料取替えなしを実現しようとする設計となっている。高温セラミックペレットを利用し、使用済み燃料からプルトニウムの抽出がしづらい。石油・ガス生産、僻地・離島、政府施設での利用などを考えている。
上記に述べたようにさまざま背景があってオバマ政権によって進められている政策であるが、研究所・民間の取組みに対して政府が開発コストの一部を支援という形が採用されており、米国原子力開発が新しいモーメントを興すかどうか注目される。