続・発送電分離の正しい論じ方


Policy study group for electric power industry reform

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法的分離を考える:分かりやすさだけで良いか

 電力システム改革専門委員会では、法的分離を推す委員の方が多いようだ。理由は結局のところ、あまり複雑なことをしない「分かりやすさ」のように感じられる。他方、規制の最小化を指向するのであれば、送配電部門の個々の機能を、中立化への影響度合いによって適切に仕分けし、仕分けた機能を資本関係のないISOに分離する機能分離が優れているように思える。法的分離は、このような仕分けの手間をかけない分、分かりやすいということだろう。

 ただ、分かりやすさと実効性は別である。分社化しても、電力会社のグループ企業として残るので、中立性確保のための行為規制及び監視が必要である。金融の世界を見ても、厳格なチャイニーズウォールの下でも増資インサイダー取引は起こりうるし、現に起こっているわけであるので、実効的な抑止のためには、証券取引等監視委員会の調査能力が非常に重要である。仮に、監視委員会の調査能力に疑問符がついてしまうと、世の中の安心を得るには、より過激な規制を行うしかなくなってしまう。例えば、増資引き受けを行う証券会社は、顧客への株の売買及び自ら株を売買することを一切禁止する、等である。

 同様に、法的分離をし、行為規制を講じたとしても、送電会社が行った個別の判断に対して、中立的でないのではないか、という疑義は発生しうる。そうした中で、監視当局が「技術のことを言われてごまかされる」と世の中に思われてしまえば;

世の中の安心を得るために、過剰な規制(「役員人事を国が握ること」も含まれ得る)が講じられ、効率やサービス水準が損われる
技術リテラシーの低い人へのわかりやすさを優先して、技術的に正当な判断が歪められる

といった状況に陥ることが懸念される。わかりやすさも安心も重要であるが、それを追求するあまり効率や品質を過度に犠牲にするのは避けるべきである。そのためには、専門性を持った人材が関与することが非常に重要である。

 ところで、過去の電力システム改革専門委員会において、「送配電部門の中立性に疑義があるとの指摘(事業者の声)」(リンク先のP18-20が該当)と題して、新規参入者(新電力)から寄せられた疑義の事例が事務局から示されたことがある。この特集でも2回取り上げ、日本電力系統利用協議会(ESCJ)なり行政なりがこれらの事例を調査し、見解を明らかにすべきと指摘した(日本における発送電分離は機能しているか送電分離の正しい論じ方)。残念ながら、これは実現していないが(電気事業連合会の見解は提示されている)、その一方で、発送電分離の議論は進められている。これは、最初から「技術のことを言われてごまかされる」とあきらめた上で、世の中を安心させるための議論をしているようにも見える。つまり、現時点の議論が既に、上記①の状況に陥っている懸念があることも、最後に申し添えたい。

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