第7回 日本自動車工業会 環境委員会運輸政策対応WG主査/トヨタ自動車株式会社 環境部担当部長 大野栄嗣氏
世界の自動車メーカーが燃費向上の競争、技術の戦国時代にある
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
第7回目にご登場いただくのは、日本自動車工業会環境委員会運輸政策対応ワーキンググループ主査で、トヨタ自動車株式会社環境部担当部長の大野栄嗣氏です。注目を集める次世代自動車の最新動向や自動車業界の省エネ対策について等、率直なお話を伺いました。
かなりのハイペースで燃費向上が進む
大野栄嗣(おおの・えいし)氏。1974年早稲田大学大学院理工学研究科卒業。同年トヨタ自動車株式会社入社、東富士研究所にてエンジン開発に従事。80年米国ニュージャージー事務所勤務。85年再度東富士研究所でエンジン開発に従事。95年技術管理部主査。99年FP部(Future Project部)部長、2003年環境部担当部長・東京技術部主査。 |
――自動車業界で省エネと言えば、やはり燃費の向上が大きいと思いますが、どのような状況でしょうか?
大野栄嗣氏(以下敬称略):乗用車では、かなりのハイペースで燃費向上が進んでいます。日本政府はすべてのカテゴリーに燃費基準を設定し、モチベーションを与えています。乗用車では、その基準よりさらに向上している状況です。
――基準よりもさらに燃費が向上しているのは素晴らしいですね。
大野:燃費基準はひとつのモチベーションにはなっていますが、我々がそれ以上に取り組んでいることがやはり大きいです。お客様が燃費のいい車をお求めになり、これが商品力になっているから、自動車メーカー各社が頑張っているのです。非常に良い意味での健全な競争状態にあり、良いサイクルで回っていると言えます。
――それは、国際市場の中での健全な競争ということですか?
大野:私どもは世界中でビジネスしていますので、日本市場だけでなく欧州や米国、中国などいろいろなところで、海外メーカーと燃費の競争をしています。
――その中で日本車は燃費の良さは、世界的にも優位ですか?
大野:日本メーカーは頑張っていると思いますが、だからといってダントツという状態では決してありません。欧州や米国など各国のメーカーも、燃費に関しては一生懸命争っております。日本メーカーは、特に次世代車と言われているものについては得意ですから有利だと思いますが、海外も含めた健全な競争状態です。
――具体的にどのように車の燃費を向上させているのでしょうか?
大野:ハイブリッドや電気自動車など「次世代車」が出てきていますが、やはり数の上では、今日現在はまだ非常に少ない状況です。日本で保有されている乗用車は6000万台近くありますが、その中でいわゆる次世代車は、やっと200万台を超えたくらいですから、割合でいくとまだ数%程度にしかなりません。
従ってCO2を削減するという意味では、圧倒的に従来型の乗用車の方が多いですから、そちらの方の燃費向上が寄与しているということになるでしょう。