第7回 日本自動車工業会 環境委員会運輸政策対応WG主査/トヨタ自動車株式会社 環境部担当部長 大野栄嗣氏

世界の自動車メーカーが燃費向上の競争、技術の戦国時代にある


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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――電気自動車(EV)は、デザインの自由度が広がるそうですね。

大野:その通りです。今出ているのはだいたいモーターが一つですが、4つ車輪があるところに各々小さいモーターを置くと言う手もあります。エンジンやトランスミッションなど、今の車はメカニカルで繋がっていますから、置く場所が限られているわけですが、EVはモーターやバッテリーを電線で繋ぐだけですから、別に直列に置かなくてもどこでもいいわけです。ですから相当デザインの自由度が増えます。

 それから電気モーターは家電用もそうですが、スタートしてモーターが回り出す、回転数が一番低いときに一番トルクが出る。だから発進するときに出足がいいので、乗っていてもフっと出るいい感じがしますね。

――自動車と燃料の多様化が進んで、ユーザーにとって選択肢が広がりました。

大野:地域によって適性が違います。私たち日本だけ考えているわけではないので、いろんな外国でどれがいいかというのは国によって違います。

――欧州ではディーゼル車がエコだとされて人気がありますが、最初は少し驚きました。

大野:ええ、欧州にディーゼル車は多いです。例えば、逆に発展途上国で効率の悪い火力発電をやっている国があるとすると、そこに電気自動車を持っていってもあまり嬉しくないわけです。しかし、効率のいい発電をしているような国だったら、電気自動車はCO2排出が少ない。

 また天然ガス自動車の需要が高い国もある。例えば、だいたい石油が採れる国というのは、天然ガスも出てきます。そういう国や地域は安く天然ガス自動車に乗れるわけです。燃料代がだいぶ国によって違ってくる。このようにいろいろ地域差がありますから、どの車が適しているかは一概にどれがベストとは言えません。我々も、いろんな国によって出し物を変えていくわけです。

――まさに技術の戦国時代とおっしゃっている通りですね。

大野:やっている人は大変かもしれませんが、技術的に見たらおもしろい時代だと思います。

次世代自動車の課題

――次世代自動車の課題には、どのようなことがありますか?

大野:ハイブリッド車は、かなり普及が進み、もう大きな課題はありません。強いて言えば、もう少しコストを下げたいですね。

 電気自動車の課題は、バッテリーだけです。バッテリーは、1回充電してからの走行距離が足りない、それから値段が相当高い、耐久性つまり寿命がまだ短い。バッテリーはこの3つがやはり完全にはできていないんです。普通のガソリン車と同等程度まで性能・コストを持ってくるには、まだまだバッテリーの研究開発が必要です。ただし、バッテリーは相当早いスピードで進化していますから、期待が持てます。

 燃料電池自動車も今後展開が期待されるものです。課題はいろいろありますが、2015年には量産が開始されるはずですので、技術開発も相当進んでおり、いかにコストダウンを行えるかなどが大きな課題となっています。

 また、電気自動車・燃料電池自動車とも、普及に向けては車両の技術開発だけではなく、充電設備や水素ステーションなどのインフラ整備も非常に重要です。

 欧州の乗用車には、ディーゼルエンジンが多いですね。日本でもクリーン・ディーゼルの乗用車は販売されていますが、まだ車種数が少ないです。今後、日本でも増えていくのかどうか、よく聞かれますが、正直に言えばお客様次第です。