第4回 トヨタ白川郷自然學校
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
今回お邪魔したのはトヨタ白川郷自然學校。その名の通り、合掌集落の神秘的な風景とそれを支える“結”の精神が息づく世界文化遺産の白川郷に立地し、その歴史・自然・伝統文化を体感できる宿泊施設です。紅葉を楽しむには少し遅い晩秋、富山空港経由、東京からほぼ3時間程度の道のりで、まったく異次元の景色が広がる白川村に到着しました。
「夏の北海道に続いて、秋の白川郷とはいい仕事だな~」という非難のお声が聞こえてきそうですが、それは聞き流し・・。
実は7年前、オープン直前の試験運用期間にお邪魔したことがありました。「トヨタ自動車」が「白川村」で「自然學校」を始めるらしいと伺い、フィールドは違えど同じく環境教育に取り組んでいたことから勉強しに来させていただいたのです。スタートから7年、トヨタ白川郷自然學校がどのような成長を遂げておられるのかを楽しみにやってきました。
それにしても、なぜトヨタ自動車が、なぜ白川村で、なぜ自然學校なんだ、と不思議に思う方が多いでしょう。
トヨタ自動車に限らず、企業にとっての環境問題は、当初公害対策を意味しました。自動車業界も、生産段階では廃棄物減量や水質汚染抑制、使用段階では車の排気を浄化する三元触媒システムの搭載、廃棄段階でのリサイクル促進などにより、車のライフサイクル全体を通じての環境負荷低減に努力し続けてこられました。それが、時を経て1990年代後半になると地球温暖化問題が顕在化し、企業の環境に対する取り組みに新たな視点が求められるようになりました。企業の取り組みで解決できる部分の多かった公害問題とは異なり、地球温暖化問題は消費者と共に取り組まねばなりません。そのためには自然を大切に思う心、環境意識を広げる活動を展開することも企業に求められるようになったのです。企業ができるだけ環境負荷の低い商品を提供し、消費者はできるだけ環境負荷をかけない使用方法を心がける。地球温暖化にはその掛け算が必要になるということで、環境意識の啓発を図る場の提供を模索し始めたそうです。
トヨタ自動車と白川村のご縁は1973年にさかのぼり、集団離村された白川村馬狩(まがり)地区の土地を買い入れ、以降社員の保養施設として利用してこられたそうですが、環境意識の啓発に対するニーズの高まりと白川郷の世界文化遺産指定がうまく重なり、ここを拠点に自然學校をスタートすることになったそうです。