第1回 石油連盟専務理事 松井英生氏

「石油」を分散型・自立型エネルギーとして位置づける政策を


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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5次にわたる政策提言、「今後のエネルギー政策に望むこと」について

――石油連盟では震災後、5次にわたる提言をされています。どの様な視点で提言を見直されましたか。

松井:震災時における石油に対する期待を踏まえて、今後検討が必要な課題は、震災前に石油連盟や石油関係企業が掲げていた課題と、全く違う内容になりました。前にご説明したとおり、震災前はCO2やライフスタイル、経済成長の観点から、今後の石油の需要は減少の一途を辿ることが見込まれ、過剰設備を廃棄しなければならない、すなわち需要に沿って設備を縮小することが大きな課題でした。

 ところが、この課題を実施する前に震災が起きました。震災では石油関係の施設も被災して生産能力が落ちましたが、オーバーキャパシティだったため、皆様方に石油製品を供給することができました。今後、生産能力やサプライチェーンを縮小していくことは、緊急時における石油の安定供給確保に問題を起こします。一定量の生産能力やサプライチェーンを維持していくためには、一定量の需要量を確保しなければなりません。このように震災前に検討していた課題と全く違う課題をつきつけられたので、関係企業と議論していく中で、課題と解決策を詰めていくのに時間がかかったため、1次、2次、3次・・・とできたものから順番に公表しました。

――実際に政策反映されたものや議論の対象になったものはありますか。

松井:提言の一番最初のポイントは、石油業界自身も震災に強い設備対応をとらなくてはならないということです。今回の震災で情報の収集にずいぶん苦労しましたので、衛星電話の整備や、本社と油槽所の間の出荷・在庫情報収集システムの整備等の情報収集体制の構築や高台における自家発の整備等、震災対応力を強化することが必要との問題意識をもちました。ドラム缶で供給して欲しいという要請も多かったので、ドラム缶を充てんする設備を増やすことも必要との認識を持ちました。これらの対応策を第2次提言で出し、国にも十分にご理解いただき、国の補助制度が実現しています。

――その他に政策に反映されたことはありますか。

松井:震災では元売り5社が系列を超えて一致団結して石油製品を供給しましたが、普段競争している会社ですから最前線ではいろいろと問題がありました。このため、今後、震災時に各社の協力体制が円滑に実現できるよう、あらかじめ震災時における各社の共同計画を地域ごとに策定して国に提出することを内容とする石油備蓄法の改正が実現致しました。もう一つは、今回の震災で我々は1500件ほどの緊急供給要請を官邸から指示を受けて石油製品を配りました。我々は純民間企業であるにも関わらず、国からの指示で全て供給しましたが、本来はおかしいことです。国が具体的な供給を指示するのであれば、国が石油製品を持つべきでしょう。国は灯油の1日分は持っていますが、残りは原油で備蓄(約110日分)している状況です。灯油もガソリンもA重油も軽油も、だいたい4日分を国が流通の末端で持ち、緊急時はそれらを国の指示で配るのが本来の体制であると提言を出し、国として受けてくれました。