原子力行政が取り組むべき優先課題

―放射性物質に対する国民の安心のために―


国際環境経済研究所主席研究員

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 マスディアの報道によると再稼働反対という声が多いようであるが、原発を止めればあたかもすべて解決するような感情的・短絡的な錯覚をもとに、再稼働や負の遺産の処理問題を決めることがあってはならない。大多数の国民はこれまでの事情を詳しく知らないのである。

 国民の声を聴いて多数意見で判断するのであれば政治家は不要である。そのような発言をする、リーダーシップの欠片もない無責任な政治家は退場していただきたい。尸位素餐を地で行く政治屋は絶対に当選させてはならない。

 最初の原子炉が稼働してから放置状態であったこの問題を、政府および国会議員は与野党問わず最優先で広く議論をして、国際的にも認められる合理的な決着を図る義務がある。原子力行政の遅滞を反省し現実を国民に周知することから始めなければならない。

 国民が原子力発電の行方に注目している今こそまたとない機会であり、政治家としての実力の見せ場なのである。世論に惑わされず中長期的視野で政策を決定して、50年~100年後に評価される歴史に名を残す政治家の登場が待たれる。

2.放射性物質を扱う技術の継承に積極的に関わるべき

 ところで、再処理問題に関連して、放射性物質の安全管理のために放射線を扱う技術者の育成を今後も続けていく必要がある。これら放射線技術者の育成は原子力発電技術を中心に行われてきた。いま、あらゆる分野で技術の継承者不足が問題になっているが、原子力でも同じである。

 原発事故後に多く見られる感情的な原子力否定論は、放射性物質を扱う技術を持つ後継者の育成の否定につながりかねない、極めて危険な議論である。これだけ社会的な批判を浴びてしまうと、原子力を学び就職しようという志を持つ若者がいなくなる。技術者が不足してしまう結果、目に見えない放射線が管理不能になってしまうことほど危ういことはない。

 海外、特にわが国の西にある中国・韓国で原子力発電所が多数設置される時代に、原子力から目をそむけて良いはずはないし、絶対にこれまで培ってきた技術が放棄されるようなことがあってはならない。民間にどのような技術伝承の仕組みが必要であるかは自明である。今回の被災経験を生かした最高の安全保安技術を誇る原子力発電所の開発であり、その海外展開である。