新電力にベース電源を分配する前になすべきこと
電力改革研究会
Policy study group for electric power industry reform
ベース電源不足なのにベース電源建設を阻害してどうする
しかし、この措置、今の日本の状況を考えると、政策議論の順番を間違えていないか。
この措置を導入すれば、電力会社は、ベース電源を建設すれば、すべからく新電力に分け与えなくてはならないことになるから、電力会社のベース電源建設のインセンティブを決定的に削ぐ。日本の現状を顧みるに、東京電力の福島第一原子力の1~4号機は廃炉が決まり、5,6号機更には福島第二の4基も再稼働は絶望的に困難と言われている。これだけでも大量のベース電源が欠落している上に、他の原発も、正直どうなるかわからない。原発政策のいかんによって、日本全体で新たなベース電源が大量に必要となるかもしれないわけであるから、その建設を促進する議論をするべきであるのに、わざわざ、ベース電源建設を阻む措置を議論している。
加えて、そもそもベース電源の定義が変わる可能性もある。現在、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会において、エネルギー基本政策の改定作業が行われているが、脱原子力依存を主張する委員を中心に、天然ガス火力(GTCC)に期待する声が多い。仮にGTCCが新たなベース電源と位置付けられるなら、これは新電力に既に建設実績もあり、このような措置を講じる前提が崩れる。また、石炭火力も、CO2対策について環境省から厳しい条件を言われたために最終的に頓挫してしまったが、新電力による建設計画がかつて存在した。CO2対策に偏った政策を是正すれば、新電力も建設するだろう。
仮に、原発が今後も一定のベース電源としての役割を果たすのであれば、その安定稼働が確保される条件整備を急がなくてはならない。新たな安全規制体制を確立して再稼働を進めるとともに、原子燃料サイクル政策の方向性をしっかりと出すことだ。ここが揺らいでいると、再稼働がなされても程なく、使用済燃料の保管場所の問題が安定稼働を脅かす事態になるだろう。米国では、国が電力会社から原発による発電電力量あたり一定額(0.1セント/kWh)を申し受けて、使用済み燃料の引き取りを保証している。こうした枠組みも検討に値するのではないか。
今の日本の電力システムの状況を考えれば、大量に欠落しているベース供給力を回復させ、安定稼働を確保することが最優先課題である。新電力にベース電源を分け与える議論は、回復後のベース供給力を何に期待するかにより変わってくるだろう。今あわてて方向性を出す議論ではないのではないだろうか。
(参考文献)第7回電力システム改革専門委員会 事務局提出資料
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/pdf/007_04_00.pdf