エネルギーコストが2割も上がるのは国難である
浦野光人氏・経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長/ニチレイ会長に聞く[前編]
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
原発がすべて止まった場合、関西でどんなことが起きるのか?
――2011年の夏よりも今年の夏の電力需給の方が厳しいという見方も強いですが、どのようにお考えでしょうか。
浦野:その通りです。原発がすべて止まった場合、特に東京よりも関西の方が厳しい状況になると思います。そうなった場合に、関西でどんなことが起こるのかは怖いくらいです。
――関西の企業は不安な気持ちで状況を見守っているのでしょうか。
浦野:そうですね。今、何となく「脱原発で行ける」と思っている方も少なくないかもしれませんが、短期的に見たときに、決してそんな簡単なことではありません。企業は短期間で海外に出ることはできませんし、タイの洪水被害のように、海外に移転したとしても、そこでまた被害にあうこともあります。
ともかく、すでにストレステストを終えて国に報告書が提出されている原発については、再稼働に向けて早急にきちんと詰めていく必要があります。信頼は心の問題でもあり、物差しで測れるものではありません。最終的にどんなやり方をしていくのか、政府や産業界、学会、そして地元の方々を含めて、みんなが真剣に話し合っていかなくてはなりません。
タイの洪水被害は必ずしも地球温暖化が原因ではないかもしれませんが、そういう環境側面も含めて考えたときに、発電時に温室効果ガスを出さない原子力発電の持つ可能性は非常に大きいと言えます。