宮井真千子・電子情報技術産業協会環境委員会委員長に聞く[後編]
日本のものづくり産業が目指すべき答えは「環境技術立国」
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
日本が目指すべき方向は環境技術立国、そして知財権を守る
――これから、ものづくり技術立国として日本の強さをいかに発揮していくのか、業界として、またパナソニックとしてどのようにお考えですか。
宮井:空洞化の懸念のなかで日本に何を残すのかという話をいたしましたが、残すべき一番重要なものは技術だと思います。電機・電子業界の成長期に、NHKなどでも特集されましたが、「電子立国日本」という言葉がよく使われました。当時はそれでよかったのでしょうが、これからは「環境技術立国」だと思います。
――なるほど、環境技術立国ですね。
宮井:日本としては、環境・エネルギー産業における技術開発をしっかりと進めていくなかで、世界に対して、高い付加価値をもって発信していく必要があります。
――環境技術、環境製品がこれからの要で、主流になるということでしょうか。
宮井:そう思います。グローバルにもそうなっていくと思います。省エネ、創エネ、蓄エネ全部です。環境技術という視点では日本の強みはまだまだあると思いますので、そこをしっかりとこれからも磨いて、さらに強くして未来につないでいくべきです。
――温暖化対策についても、業界として大いに貢献できそうですね。
宮井:はい。そして政府に対してお願いするとすれば、技術にはつきものですが知的財産権をいかに守っていくかという点です。また、グローバルに輸出していく時には技術を評価する物差しなども一緒に輸出していくべきです。そうしたところでも、官民挙げた取り組みが重要だと思います。企業だけではできないし、また官だけでもできません。だから官民挙げてスピードを上げて進めないといけません。
――たしかに中国や韓国の成長はすさまじいですね。
宮井:その通りです。韓国にしても中国にしてもすさまじい成長をしています。10年前には考えられなかったくらい逆転して来ていますので、もっとスピードを上げて対応していかなくてはなりません。このままですとどんどん差をつけられると思います。やはりスピードと政策が重要だと思います。
――産業をバックアップする政策が大事ですね。
宮井:環境の分野では、まだまだ中国や韓国より優るところがあると思いますし、ぜひ官民挙げて強化していく必要があると思います。
――未来に向けて、業界としてどのように貢献していくのか、またはこういう方向性で行くという考えはありますか。
宮井:非常に難しい質問ですが、日本の成長を築いてきた業界でもあると思いますので、日本がさらに成長していくための産業であり続けるために何をしていかなくてはいけないのかを考えなくてはなりません。そのなかでも、やはり環境・エネルギー政策は非常に重要ですので、日本が成長するための取り組みを政府とともに積極的に進めていければと思います。
――デジタル・ネットワーク時代において、まさに電子情報技術に関わる産業がこれからの核となっていかないといけませんね。
宮井:そうですね。それをもっと環境立国に貢献させるべく、さらなる成長が図れたらと思います。
【インタビュー後記】
会話のキャッチボールのように、さまざまな質問にてきぱきと答えてくださるのが印象的でした。省エネ、創エネ、蓄エネやホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)等の展開についても、生活者の視点を大事に今後発展させていく方向性をお聞きできました。環境技術立国が日本のこれからのあるべき姿であると、凛とした姿勢と言葉に思わず大きくうなずいてしまいました。(インタビューは2011年9月27日に実施)