宮井真千子・電子情報技術産業協会環境委員会委員長に聞く[後編]
日本のものづくり産業が目指すべき答えは「環境技術立国」
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
生活者の視点に立って、ハードがどこまでカバーするかを考える
――私もスマート・ハウスの実証実験現場に何度か足を運んでいますが、これからはホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)が注目されそうですね。
宮井:暮らしの一番中心に近い商材をたくさん持っており、HEMSを自主的に推進できるのがパナソニックの一番の強みです。これからは単品の世界ではなくて、それらをつなげるHEMSにより、エネルギーを賢く使っていくという時代に入っていくでしょう。
――HEMSが家庭に浸透するのは10年くらい先になるのでしょうか。
宮井:それは難しいところです。どのレベルだったら家庭に浸透したと言えるかが問題です。ちょうど10年くらい前にネット家電が話題になったことがありました。たとえば冷蔵庫の中身を管理しましょうとか。しかし、なかなか普及しませんでした。
そこにはコストとニーズのミスマッチが起こっていて、住む人にとっては、話を聞いたら便利だねと感じても、実際には使いこなせなかった。そして、やはり投資対効果です。装備するにはそれなりの投資が必要ですので、便利だけれどそこまではいらないという時代だったのだと思います。
ところが10年以上経ち、エネルギーの地産地消の時代になってきました。またネット家電も非常に重要になってくるなかで、どこまで機器メーカー側が貢献していくのかがこれからの重要なポイントだと思います。
――家の中の家電をすべてコントロールしていく方向ですね。
宮井:冷蔵庫の中身をコントロールするところまで踏み込むのか、それとも屋内を快適化する、警鐘を鳴らす程度でいいのか。その辺りが、これからの課題だと思います。実証実験をしながら、住んでいる方と、実験結果も含めてどうしていったらいいのかを考えていかないといけません。
――私たちのニーズをしっかり受け止めて商品展開をしてくれる期待があります。
宮井:生活者、使う側の視点に立って、どこまで機器がカバーすべきなのかを考えていきたいと思います。
宮井真千子(みやい・まちこ)氏。1983年に松下電器産業(現在のパナソニック)に入社。くらし研究所所長、クッキング機器ビジネスユニットビジネスユニット長などを経て、2011年4月に役員・環境本部本部長に就任、同7月からは節電本部本部長を兼務。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)では環境委員会委員長を務める