塩崎保美・日本化学工業協会技術委員会委員長に聞く[前編]
温暖化問題とエネルギー問題は表裏一体。政府には現実的な解を求めたい
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
再生可能エネルギーの導入コストは日本人全体の負担に
塩崎:誤解のないように聞いていただきたいのですが、業界として、あるいは私個人として、エネルギー問題と温暖化問題は表裏一体であり、再生可能エネルギーを開発することは大事だと思っています。しかし、問題は開発費を誰が負担するのかということです。
たとえば、全量買取制度の形で太陽光発電を大量に導入するとなると、海外製品が日本に入ってきて、結局、日本の太陽光発電に関わる産業がダメになる懸念があります。現実に、海外製品がたくさん入ってきています。また、全量買取のコストを現実に誰が負担することになるかをきちんと国民の前に示したうえで政策を決めていくべきではないでしょうか。
もちろん再生可能エネルギーの技術開発は大事で、必要な研究投資はやっていくべきです。しかし、その間のエネルギーをどうするのか、開発費を誰が負担するのかを議論して決めていくことが重要です。日本人全員で共有し、負担しなくてはならないと思います。
――受益者負担で広く国民が負担していくということですね。税金で買取費用の一部を負担することも考えられます。
塩崎:税による負担は、日本の今の財政状況ではできないのではないでしょうか。政策という意味では、エネルギー問題、温暖化問題、社会保障問題、税金の問題などを総合的に考えなければいけないでしょう。各省庁が出してきた計画をそのままやっていたら、今の1000兆円近い財政赤字の利子を払うだけで破綻してしまいます。私の勉強した範囲ですが、ギリシャは破綻して大変な状況ですが、日本の国債は外国人が買っていないことで暴落せずにすんでいます。もし外国人が買っていたら、すでに日本もギリシャのような状態になっているはずです。
――その懸念はあります。
塩崎:専門家は皆知っていると思いますが、国の財政がこういう状況であるということを国民にきちんと説明しなければいけません。
(後編に続く)