松井英生・石油連盟専務理事に聞く[後編]
震災を教訓に、石油製品の平時からの利用と備蓄の体制づくりへ転換を
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
脱化石燃料と言われて石油は悪者だった
今、重油を多く求められても、普段使っていないため体制ができていない
――日本でも地球温暖化対策などで化石燃料の使用を減らしていく方向でした。
松井:灯油、産業用の重油の使用も減っています。火力発電も減っています。コストが高いということ、また二酸化炭素(CO2)の削減、この二つの観点から悪者なんですね。40年前にオイルショックがあって、脱石油と言われました。ここ数年はCO2問題で、脱化石燃料と言われたわけですね。石油は悪者で、なるべく使わなければいいという世の中の流れでした。
今回の震災で、やはり石油は重要だと見直されています。現在のところ、一次エネルギー供給の40数%は石油です。電力会社は、震災前は原発を重点に考えていました。現在の電力のうち石油火力の割合は7~8%ですが、今後10年間で5%になるような見通しを持っていたわけです。
今、原発が止まって、あわてて重油の供給が求められています。仮に原発が全部止まりますと、年間の電力向け重油でだいたい1300万klだったのが、日本エネルギー経済研究所の試算では約4100万klが必要になる。需要が3倍に増えると、供給できるかギリギリです。普段から使われているものではないので、重油を作って供給できる体制になっていません。
――原油の追加の輸入も必要になりますね。
松井:重油の輸送には特別な専用タンカーが必要ですが、輸送用のタンカーが減っている。石油会社は、原発が来年度仮に全部止まって、4100万klの要請が来ても応えられるように頑張っていますが、タンカーが本当に調達可能かきわめて心配です。今の状況ではまだ大丈夫とは言えない段階です。
石油の重要性を見直したうえで電源のベストミックスを再検討していただく必要があります。今、LNG(液化天然ガス)が大変増えていますが、LNGで本当に全部やっていけるかという問題もある。消費者も、公共施設も、電力会社も、一定量の石油製品をお使いいただくことが安全・安心の確保という意味で重要です。
――震災後は、化石燃料を見直し、再評価する機運かと思います。私も震災後に被災地の宮城県に入りましたが、非常事態では車が非常に役立つと聞きました。
松井:車に乗っていれば暖が取れるし、テレビも見られるし、車はいいものですね。最近の若い人は車を使わない人が増えていますが、安全・安心の観点からも役に立つことを意識していただきたい。