奥平総一郎・日本自動車工業会環境委員長に聞く[前編]
東日本大震災をバネに、災害に強い体制を構築したい
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
対策本部の迅速な立ち上げと判断できる人が現地で情報整理・発信することが必要
――非常事態においての社内での問題の洗い出しについてはどうでしたか。
奥平:非常事態が起きたとき、トヨタ自動車では、すぐに特別のチームを作って現地に送りました。工場やインフラまわりがどうなっているのか、工場周辺の方々はどうかを確認させ、救援物資を積んで、トラックとバスで100人程度が、震災当日に現地へ向かいました。
一方で、本社では全社の対策本部と各分野ごとの対策本部を作り、調達、生産、販売、技術等をテレビ会議でつなぎました。現地に入る人には衛星電話を持たせ、現場の情報をどんどん本社に送りました。
今回感じたのは、まず、判断できる人間を現地に送りこむことが大事だということです。情報というのは、判断ができる人とセットにならないと生きてこない。また、それを支えるバックの組織を立てることを大事であり、それがやれたことが良かったと思っています。
――非常事態が発生した際には、そうしようと決めていたのですか。それとも急な対応策でしたか。
奥平:阪神大震災、中越沖地震もありました。中越沖地震の際に仕入先が被災し、エンジンの基幹部品であるピストンリングの供給が止まり、一時生産停止となったことが教訓になっています。
今回、災害等の非常時体制が準備していた通りに迅速に立ち上がったというのは、それらの結果だと思います。震災対応の経験をした部長がたまたま被災地の近くにおり、現地に急遽入ってもらい、陣頭指揮をとってもらいました。
――現地に決定権限を委譲されたのですか。
奥平:基本的には現地で状況を整理して、何が必要なのか本部に伝えてもらいました。社長・役員が毎日朝晩集まり、即時に対応を決断いたしました。