発送電分離問題の再考①

10年経過も効果が見えない米国ISO/RTO


海外電力調査会調査部長

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苦肉の策として登場した米国の送電組織RTO

 米国ではRTOと呼ばれる組織が、送電線の開放による競争促進と広域系統運用によって、より効率的な電気事業体制を構築すべく設立されている。

 下の図が示すように、現在7つのRTOが運営されており、これら組織がカバーする人口は2億人近くに上る。RTOは、自由化の動きが顕著であった1990年代後半に、州際卸取引や送電料金を規制する連邦エネルギー規制委員会(FERC)が競争促進策として推奨した結果、設立されたものである。

 この組織がユニークなのは、送電線所有権を電力会社に残したまま、その運営権をRTOに委ねた点である。本来ならば、所有権と運営権を有した送電専業事業者の方がRTOよりも望ましい。だが、民間電気事業者に送電線を強制的に売却させる法的権限が当局にないというのが当時の一般的考え方であったため、苦肉の策として出てきたアイディアがRTOという組織形態であった。現に、カリフォルニア州の電気事業再編で当時最も影響力のあった公益事業委員会(CPUC)は、州内の民間電気事業者所有の送電線を売却させ、単一の送電会社設立が好ましいと考えていた。しかし、法的に強制は難しく、設立のためには3~5年の準備期間と多額のコストが伴うため断念している。

米国のISO/RTOマップ。7つのRTOが広範な地域に電力を供給
米国のISO/RTOマップ。7つのRTOが広範な地域に電力を供給