発送電分離問題の再考①

10年経過も効果が見えない米国ISO/RTO


海外電力調査会調査部長

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米国政府説明責任局がRTOの支出内容にメス

 FERCは、RTO設立により効率的な発送電運営が可能となり、最終的には需要家の料金値下げに帰結することを期待している。RTO設立を推奨した委員会令である「オーダー2000」では、RTOが設立されれば少なくとも年間240億ドル(1兆9200億円)の便益がもたらされると喧伝していた。

 複数の電気事業者の送電系統を統合することにより、送電グリッドのさらなる効率化や発電事業者が電力市場にアクセスしやすくなる点など、RTOが便益の機会を提供すると考える関係者は多い。しかし、RTOという組織なしに、こうした便益を実現できると考えている関係者もいる。また、RTO設立の結果として電源の一層の効率的運用が可能となることについては意見が一致しているが、最終消費者が支払う電気料金が安くなるかどうかについては意見が分かれている。これまでに、RTOに関わる1ダースくらいの計量経済モデルによる実証研究があるが、これらの研究結果からは、RTO設立による純便益がどれくらいか、卸電力価格変化のうち、どの程度がRTO効果によるものなのかどうかなどについて、明確な結論は導き出せていない。

 RTOの設立費用は、安いところで2億5000万ドル(約190億円)、高いところで5億ドル(約380億円)かかっている。さらに、設立以降のRTOの管理費(資本費+非資本費)が増加傾向にあることが指摘され問題となった。このため、米国政府説明責任局(GAO)がRTOの支出内容を精査している。この調査によれば、RTOが2002年~2006年に管理費として支出した総額は、年間9億6000万ドル(約730億円)となっている。最新のデータ(2009年)でも、RTO全体の年間管理費は約8億7000万ドル(約661億円)である。卸電力コストに占める比率から見ると管理費は1%にも満たないが、RTO運営の費用は安くない。