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エネルギー政策に必要な五つのE


国際環境経済研究所所長、常葉大学経営学部教授


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(「EPレポート」からの転載:2020年10月21日付)

 

 エネルギーの選択を考える際によく言われる3E(経済性、安定供給、環境性能)。だが、最近の欧米のグリーンニューディールに基づく再エネシフト政策を見ていると、さらに二つEを加え、五つのEを考える必要があるようだ。雇用(Employment)と収入(Earnings)だ。

 米国では民主党バイデン前副大統領が、大胆な再エネ導入策を打ち出し、今後4年間で5億枚の太陽光パネル、6万基の風力発電設備を導入するとしている。設備量に換算すると、今の米国の太陽光と風力発電設備を一挙に3倍近くに引き上げるレベルだ。しかし、この政策は、民主党支持母体の労働組合から批判されることになった。

 太陽光・風力発電所はいったん設置すれば、運転のために多くの人は要らない。運転から燃料、保守まで多くの人が必要な火力発電所との比較では発電部門での雇用者数は大きく減少する。建設関係の組合は、再エネ設備の工期が化石燃料関連設備との比較では短いことも、雇用減につながると指摘している。再エネ関係の工事と設備の運転に関わる人の賃金が相対的に低いことも組合は問題視している。発電設備が再エネにシフトすれば雇用も収入も減少する。

 また原子力発電を含む米国バイデン案と異なり、廃棄物処理などの観点から原子力を環境に資する案件としない欧州委員会案は、さらに問題だ。仮に原子力から再エネヘのシフトが進むと、雇用は大きく減少する。そのため米国での雇用数を見ると、原子力発電所と風力発電所では発電に関わる人員だけみても7分の1になってしまう。実際の雇用の差はもっと大きいだろう。

 気候変動対策として、あるいは景気刺激策として再エネ導入を進める政策には雇用と収入が減少するという大きな落とし穴がある。日本も再エネにシフトすれば、雇用と収入の減少に直面する。経済が成長せず失われた平成の時代から抜け出せない日本は、エネルギー政策の前提として五つのEを考える必要がある。CO2削減も大切だが、それは雇用と収入が維持されてのことだ。



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