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ビル・ゲイツも投資する蓄電池ビジネス

米カリフォルニア州は世界最大規模の蓄電池導入へ


国際環境経済研究所所長、常葉大学経営学部教授


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(「月刊ビジネスアイ エネコ」2019年1月号からの転載)

 マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は、気候変動問題に熱心に取り組んでいることでも有名だ。パリ協定が合意された2015年の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に出席し、ソフトバンクの孫正義会長兼社長を含む世界の富豪28人と共同で「革新的エネルギー同盟」(BEV)を設立し、二酸化炭素(CO2)を排出しない安定的で競争力のある低炭素電源に投資することを発表した。
 投資額は10億ドル(約1100億円)。投資対象のエネルギーは、再生可能エネルギー、原子力などに関する新技術が主体だ。すでに固定電池、核融合、地熱発電などの新技術開発企業に投資を行っている。ゲイツ氏は2018年10月17日、主に米国で行っていたファンドによる投資を欧州でも行うと発表した。
 欧州での投資額は1億ユーロ(約130億円)で、欧州連合とゲイツ氏が会長を務めるBEVが50%ずつ投資する予定だ。ゲイツ氏は「気候変動問題での欧州のリーダーシップはかつてないほど重要であり、鉄鋼生産、肥料製造などの分野では大きな排出削減を実現できる可能性がある」と述べている。
 欧州委員会のエネルギー同盟担当副委員長、マレシュ・シェフチョビチ氏は「民間の投資が必要なのは、意思決定が早いためだ。大切なのは蓄電池技術だ。輸送、エネルギー部門の脱炭素だけでなく、鉄鋼生産などの産業でも必要になる」と述べたが、ゲイツ氏は「個人的に複数の蓄電池関連企業に投資した。なくなった企業もあるし続いている企業もあるが、高成長分野ではリスクを取ることが必要」と語っている。
 投資先として蓄電池関連企業が選ばれるのは、今後主体になる電気自動車(EV)用として重要な技術だからだ。充電時間の短縮、航続距離の延長、安全性向上といった電池性能と価格低減は、輸送分野におけるEV主力化の時期を決めることになる。さらに、バス、トラックのEV化を左右する大きな要素になる。輸送部門でのCO2排出削減が大きな課題である以上、輸送部門でも蓄電池は大きなテーマだ。
 蓄電池は、発電部門でも重要な役割を果たすようになってきた。再エネの導入量が増えるに連れ、電力供給を安定化することが大きな課題になってきたからだ。風力発電量が全供給量の半分近くまで増えた豪・南オーストラリア州は17年、米テスラ社製の蓄電池を送電網の中に導入したが、さらに追加導入を検討中だ。
 太陽光発電量で全米1位、風力発電設備容量で全米4位のカリフォルニア州では、数年前から送電網の中に蓄電池を導入しているが、太陽光と風力発電設備の発電量が大きく増える時には、供給量が需要量を上回る状態になり、再エネ設備の発電量を毎月抑制する状態が続いている。
 この状況を改善するには、送電網の中に大型蓄電池を導入する必要があるが、同州の電力・ガス会社パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社(PG&E)は、再エネのバックアップ電源として天然ガス火力に代わり大型蓄電池を導入する計画を立て、同州公共事業委員会(CPUC)が計画を認可した。世界最大規模の蓄電池導入となる。

再エネの発電量増加に悩む米カリフォルニア州

 カリフォルニア州は、気候変動問題への対応に熱心だ。太陽光、風力発電設備の導入、EV導入支援などのため、さまざまな政策を導入している。同州の太陽光発電設備導入量は全米一となり、全米の太陽光発電設備導入量(5830万kW)の39%(2278万kW)を占めている。発電量も大きく、223億kWh(18年1~7月)だ。
 さらに風力発電設備容量も全米4位の569万kWで、その発電量は92億kWh(同年1~7月)だ。同州の水力発電以外の再エネの全発電量は同期間355億kWhで、全発電設備からの発電量は1113億kWhだ。
 同州では、再エネ発電設備の導入拡大により、14年5月から電力需要が少ない日には出力抑制が毎月必要になった。抑制量は再エネ設備の拡大に伴って増え、捨てられる再エネ電力量は増加を続けている。同州の送電管理者によると、18年10月に8300万kWh超が捨てられた。
 太陽光と風力の発電量増加に伴い、同州の火力発電の主体である天然ガス火力の発電量が減少している。天然ガス火力は3800万kWあるが、18年1~7月の発電量は469億kWhで、稼働率は22%程度に低迷している。
 同州の大手3電力会社の1つであるPG&E社は、老朽化した天然ガス火力の閉鎖を行い、代替設備として世界最大の蓄電池を送電網に導入することを計画した。同社は、同州中部から北部に電力の顧客530万件、天然ガスの顧客440万件をかかえ、水力から原子力まで約800万kWの発電設備量を持つ()。
 CPUCは18年11月、蓄電池導入計画を承認した。稼働率の低迷に加え、同州の電力事業用の天然ガス価格は全米平均を上回っていることから、天然ガス火力の発電コストが相対的に高くなることも考慮されたと思われる。

図 PG&E社が保有する発電設

図 PG&E社が保有する発電設
※2016年末の設備量
※PG&E社はパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社
出所:PG&E社のホームページより

世界最大の蓄電池を導入する米PG&E

 CPUCは、蓄電池を導入したほうが非常用電源を確保するより安くなり、その結果、需要家の電気料金支払い額も軽減される前提で、競争力のある蓄電池契約選定作業をPG&E社が開始することを18年1月に承認した。
 この決定を受け、同社は契約選定作業を進め、4基のリチウムイオン蓄電池(計56万7500kW)を送電網に導入する計画を固めた。テスラ社が17年、南オーストラリア州に導入した10万kW、12.4万kWhの蓄電池が世界最大とされているので、PG&E社の導入が完了すれば、その規模は一気に拡大することになる。
 同社が導入を計画している蓄電池はの通り。テスラ製の蓄電池(18万2500kW、73万kWh)はPG&E社が保有するが、残りの3プロジェクトは第三者が保有する。導入は19~20年にかけて行われる予定だ。

表 PG&E社の蓄電池プロジェクト

表 PG&E社の蓄電池プロジェクト
出所:PG&E社プレスリリースから作成

 PG&E社は18年7月、CPUCに対し計画の申請を行った。一部需要家などから、蓄電池導入は電気料金の引き上げにつながるとして反対を受けたが、CPUCは4対1で認可した。CO2の排出削減に結び付くことや、コスト面でも低稼働率の天然ガス火力より、コストが下がっている蓄電池のほうが相対的に有利との判断だ。
 再エネ導入量が急増し、火力の稼働率が低下しているカリフォルニア州の特殊な事情もあるものの、再エネ導入量が増加するに連れ、多くの地域で火力発電所の稼働率が低下し、出力抑制により捨てられる再エネ電力が増えることを考えれば、蓄電池が老朽化した火力発電所を代替するケースが増えていくだろう。ビル・ゲイツ氏が投資対象にした蓄電池をめぐる技術開発競争は、これからさらにし烈になっていく。



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