「気候変動適応法案」閣議決定

―法制化による企業の適応ビジネス後押しを期待―


国際環境経済研究所主席研究員、一般社団法人 環境政策対話研究所 理事

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 2018年2月20日、政府は「気候変動適応法案」を閣議決定した。(環境省プレスリリース:https://www.env.go.jp/press/105165.html

 気候変動への取組は、2016年に発効した地球温暖化防止の国際枠組みである「パリ協定」が有名だが、国際社会では、温室効果ガスの排出削減対策(緩和策)と、気候変動の影響による被害の回避・軽減対策(適応策)が車の両輪として取り組まれている。

 日本では、緩和策については地球温暖化対策推進法の下で取組みが進められてきたが、適応策について法的な位置づけが示されたのは、今回の「気候変動適応法案」が初めてとなる。

 他の先進諸国、フランス、イギリス、ドイツ、アメリカでは、2011年以降、国家レベルの適応計画を策定しており、法的な根拠により、国、地方自治体、企業等に対策を求めている。

 日本でも、2015年に、「気候変動の影響への適応計画」が閣議決定され、温暖化の影響を受ける可能性のある分野ごとに影響の予測や対策づくりを求めていた。しかし、適応計画の法的根拠が曖昧とみなされ、自治体や企業による対策づくりは進んでいない現状があり、これまで法制化が求められてきた。

 気候変動に対処し、国民の生命・財産を将来にわたって守り、経済・社会の持続可能な発展を図るために、温室効果ガスの長期に亘る大幅削減に全力で取り組むことが重要である。

 また、日本においても、気候変動の影響はすでに顕在化しており、今後さらに深刻化するおそれがある。既に生じ、さらに予測される被害の回避・軽減等を図る気候変動への適応に、多様な関係者の連携・協働の下、一丸となって取り組むことが一層重要である。このたび、このような状況を踏まえ、気候変動への適応を初めて法的に位置付け、推進することとなった。

 気候変動適応法案の参照条文は、地球温暖化対策の推進に関する法律、国立研究開発法人国立環境研究所法、独立行政法人通則法、環境基本法、水銀による環境の汚染の防止に関する法律、である。また、「気候変動適応法案」には、案文だけでなく、理由が以下のように述べられている。

 『気候変動への適応を推進するため、政府による気候変動への適応に関する計画の策定、環境大臣による気候変動による影響の評価の実施、国立研究開発法人国立環境研究所による気候変動への適応を推進するための業務の実施、地域気候変動適応センターによる気候変動への適応に関する情報の収集及び提供等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。』

 さて、法案の概要は以下のようになっている。

(1)適応の総合的推進

国、地方公共団体、事業者及び国民が気候変動への適応の推進のために担うべき役割を明確化する。
政府は、気候変動適応計画を定める。
環境大臣は、おおむね5年ごとに、中央環境審議会の意見を聴き、気候変動による影響の評価を行う。

(2)情報基盤の整備

国立環境研究所は、気候変動の影響及び適応に関する情報の収集及び提供や、地方公共団体や地域気候変動適応センターに対する技術的援助を行う。

(3)地域での適応の強化

都道府県及び市町村は、地域気候変動適応計画の策定に努める。
都道府県及び市町村は、気候変動の影響及び適応に関する情報の収集及び提供等を行う拠点(地域気候変動適応センター)としての機能を担う体制の確保に努める。
地方環境事務所その他国の地方行政機関、都道府県、市町村等は、広域的な連携による気候変動への適応のため、気候変動適応広域協議会を組織する。

(4)適応の国際展開等

気候変動への適応に関する国際協力の推進や、事業者による気候変動への適応に資する事業活動を促進する。
気候変動適応法案の概要出典:環境省ホームページ[拡大画像表示]

 今回の法制化により、自治体や企業による適応への対策づくりが進展することが期待される。

(「気候変動適応法案」案文より抜粋)

第18条(国際協力の推進)
国は、気候変動等に関する情報の国際間における共有体制を整備するとともに、開発途上地域に対する気候変動適応に関する技術協力その他の国際協力を推進するよう努めるものとする。

第19条(国の援助)
国は、地方公共団体の気候変動適応に関する施策並びに事業者等の気候変動適応及び気候変動適応に資する事業活動の促進を図るため、情報の提供その他の援助を行うよう努めるものとする。

 温暖化への適応は、気象災害などネガティブなの側面への対策だけではない。上記の条文(抜粋)にも明記されているように、国際協力の推進、適応ビジネスの促進が法案に盛り込まれたことから、適応への取組みをポジティブに捉え、官民が連携して、国内だけでなくグローバルな視野を持って、産業界の適応ビジネスの機会創出へと繋げていくことが期待される。