ハノイの大気汚染


駐ベトナム日本国大使


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 次の都市名は、2018年1月16日(火)の「世界大気汚染都市ワースト10」(USAQI)注1)です。カルカッタ(インド)、ラホール(パキスタン)、ダッカ(バングラディッシュ)、ウランバードル(モンゴル)、ハノイ(ベトナム)、カトマンズ(ネパール)、デリー(インド)、インチョン(韓国)、カトヴィツェ(ポーランド)、カラチ(パキスタン)です。

 また、国別の大気環境ランキング注2)では、ベトナムは180カ国中170位(180位:バングラディッシュ、179位:中国、日本:104位)という結果で、日本ではあまり知られていませんが、ベトナム、とりわけハノイの大気の状況はかなり悪いと言えます。

 今回は、「ハノイ」の大気汚染について感じていることを書きたいと思います。

 2016年11月、ハノイに着任して一番驚いたことは、「街の活気」と「大気汚染」でした。年が明け、2017年第一四半期は、天皇皇后両陛下の初のベトナムご訪問、安倍総理、大型経済ミッションの訪越が続きました。2月中旬、両陛下への御進講のための一時帰国時に、羽田空港からホテルに向かう首都高で「美しい満月」を見て、3ヶ月近く、曇天が続くハノイで「月」を見たことがないことに気付きました。また、この一年間に、咳が一週間以上続くことが数度ありました。
 ベトナムは、発展のエネルギーに満ちており、また、世界有数の親日国であることから、この時期にベトナムで勤務できることは、非常に幸運です。しかし、大気汚染対策は重要な課題です。国籍を問わず、ハノイ在住者の中には、私と同様に咳に苦しむ人がたくさんいます。アレルギー体質の人は、症状が悪化しやすいと言われています。また、出張者で敏感な方は、空港からハノイ中心部に向かう途上で、鼻や喉に異変を感じられる方が多いです。

 ハノイ勤務になって、起床後、「大気汚染度」をチェックすることが日課となりました。ここ数か月、「世界大気汚染都市ランキング」を眺めていて、気づいた特徴は次の3点です。

世界中で、インド亜大陸とウランバードルの汚染度がずば抜けて高く、ほぼ毎日、健常者も屋外活動を控えるようにとの勧告が出ています。
中国各都市の汚染度が日によって大きく変化し、成都が常に一番悪い。北京は汚染改善の兆しが感じられます。
東南アジアの都市の中では、ハノイのみがワースト10に度々ランクインします。ベトナム内では、ハノイの汚染度がずば抜けています。東南アジアという事で、多くの方が常夏と誤解されていますが、ハノイには冬があります。

 ハノイの大気汚染の主な要因は、①曇天の日が多く、風が吹かない冬の天候(11月―2月)、②バイクと車の排気ガス、③建設中のビル等の粉塵、④野焼きと言われています。ハノイ市内にはバイクがあふれていますが、バイク運転手の大半がマスクを着用しています。


出典: Vietnam news

 因みに、1月16日の汚染度と注意事項は次の通りです。

カルカッタ、ラホールの汚染度は、「危険」(HAZARDOUS)。全ての人は屋内にとどまり、屋外活動の中止が求められています。
ダッカ、ウランバードルの汚染度は、「極めて健康に良くない」(VERY UNHEALTHY)。高齢者、子供、心疾患・肺疾患を有する人は屋外活動を中止することが求められ、それ以外の人も長時間または激しい活動を中止することが求められています。
ハノイ、カトマンズ、デリー、インチョン、カトヴィツェ、カラチは「健康によくない」(UNHEALTHY)。高齢者、子供、心疾患・肺疾患を有する人は、長時間または激しい活動を中止する必要があり、それ以外の人もそのような活動を減らすことを求められています。

 ベトナムは、昨年、経済成長率6.81%(ASEAN主要国で一番の見込み)、外国直接投資(認可ベース)も585億ドル(10年で最高額)を記録する等、非常に好調です。高層ビル建設も多く、例えばエレベーターの需要はアセアン10か国で一番伸びています。その一方で、例えば、ハノイでは公共交通整備は多くの計画が進展していないなど、有効な大気汚染対策がほとんど講じられていないのが実情です。
 ベトナムにとって、環境を重視した「持続的発展」の実現は、今後ますます重要になります。日本政府としては、専門家の協力をえて、大気汚染の改善に向けて如何なる協力が可能か検討したい意向です。

注1)
出典:スマートフォンアプリ「Air Quality」、Ranking、2018年1月16日11時25分時点のもの。
注2)
環境パフォーマンス指数(Environmental Performance Index :EPI、イエール大学とコロンビア大学が各国の環境パフォーマンスを測定して指標化したもの)の項目の一つである、大気環境ランキングより引用。順位は2016年1月のもの。